文化財レスキュー 児童書に 市立博物館の再建描く ポプラ社から発刊 『未来へのたからもの』
令和8年8月18日付 3面
平成23年の東日本大震災で被災した陸前高田市立博物館の再建と、文化財レスキューの事実を描いた児童書『未来へのたからもの 陸前高田の文化財レスキュー物語』(竹内早希子著)がこのほど、㈱ポプラ社より発刊された。同館主任学芸員の熊谷賢さんをはじめ、同館や文化財に関わる人々の視点から、前代未聞といわれた文化財レスキューと、先人たちの心を未来へとつなぎ、人を育む博物館の意義に触れられる一冊となっている。
昭和34年、東北第1号の公立登録博物館として開館した同市立博物館。平成6年には、貝類標本や日本最大のツチクジラのはく製などを展示する市海と貝のミュージアムもオープンし、地域に根ざした博物館施設として市民とともに歩んできた。
『未来へのたからもの』は震災の8年前、旧下矢作小学校の児童らが見つけ、はく製が市立博物館に所蔵された鳥・アカショウビンの物語から始まる。
同館や海と貝のミュージアムは市民らに親しまれてきたが、震災ではほかの文化財関連施設とともに甚大な被害を受け、文化財約56万点が被災。市の学芸員として唯一生存した熊谷さんは、被災資料の救出と博物館の再建を誓う。
文化財レスキューは震災発生から3週間近くがたった3月末、市立図書館に保管されていた県指定有形文化財・吉田家文書の回収からスタート。当初は博物館や市教委の関係者、県内の学芸員らが携わり、その後は全国の博物館施設約70カ所の協力を受けて約46万点を救出した。市立博物館は令和4年11月に再建され、被災文化財の安定化処理や修理は現在も続いている。
同書では、被災したアカショウビンやツチクジラのはく製の修復に関するエピソードも掲載。熊谷さんが学芸員になった経緯、アカショウビンを見つけた児童、貝の研究を続けた少女の成長など、〝人を育て、人に育てられる博物館〟としての意義にも触れ、未来に残すべき文化財に込められた人々の誇り、ふるさとへの思いも描いている。
著者の竹内さんは、昨年何度か陸前高田に足を運び、熊谷さんをはじめ、遠野市立博物館の学芸員・前川さおりさん、陸前高田古文書研究会の佐藤美智子さん、帯を担当した国立科学博物館長の真鍋真さんら市内外の関係者に取材を重ねた。児童書として分かりやすく、丁寧に文化財レスキューの作業や携わった人々の思いを描いており、大人も読み応えある一冊となっている。
熊谷さんは「取材を受け、改めていろんな人が文化財レスキューに関わり、多くの助けがあって博物館の再建ができたと実感した。この本を読んでもらえれば、この博物館ができた理由が分かると思う。震災を経験していない子どもたちにも読んでほしい」と話している。
『未来へのたからもの』は四六判、一部カラー190㌻で、価格は税別1700円。売り上げの一部は、同館の文化財修復に寄付される。(三浦佳恵)






