住田高校〝募集停止〟予測に危機感 県教育委が公表 教育関係者ら影響を懸念
令和8年8月20日付 7面
県教育委員会が、令和10年度から12年度の3年間に予測される県立高校の学級減等の時期を公表し、住田町の県立住田高校(水上弓枝校長、生徒55人)が10年度に募集停止となる可能性があることが示された。これを受け、町内の教育関係者の間では危機感が高まり、予測の段階で校名と年度が明示されたことへの戸惑いも見られる。今回の公表が、受験生の進路などに与える影響も懸念されており、住田高存続に向けた今後の動きが注目される。(阿部仁志)
県教委は、県立高校について、1学年1学級校で入学志願者数が2年連続で20人以下となった場合、原則翌年度から募集停止とする方針を設けている。令和8年度の住田への入学者数は、「いわて留学」制度で県外から入った2人を含む13人。9年度も20人以下となれば募集停止の判断要素に当てはまることなどから、今回の予測で募集停止の可能性が示された。
これに対し、同町の教育関係者や住田高校の魅力化を後押しする町民らは危機感を強め、複雑な思いを抱く。
町教委の松高正俊教育長は「事前にこうした公表があることを知らされておらず、正直驚いている。『あくまで予測』と言われればその通りだが、一般の方が見れば〝廃止〟とも受け取られかねない内容で、本年度の志願者にとっていい影響はない」と受験生への影響を懸念する。
同校同窓会長の千葉修悦さん(72)=上有住=は「人数が少ない住田高ならではのゆったりとした環境が、生徒の心の余裕を生み、将来的な成長の土台をつくっている。関係者には、進学率や偏差値などの数字では測れない部分にもっと目を向けてもらいたい」と注文する。
町教委によると、同校の過去5年間の入学者数は令和3年度37人、4年度19人、5年度17人、6年度28人、7年度24人。
このうち4、5年度は県教委の「2年連続20人以下」の条件に該当したが、同校に対して町が多くの支援を展開している点や、地域で一丸となり魅力向上に努めていることなどから、募集停止の判断が見送られた経緯がある。
町からの支援としては、通学費や給食費、海外派遣の支援、自学自習スペース「住高ハウス○○」の開設、生徒の取り組みを後押しする教育コーディネーターの採用などが挙げられる。町と高校が強固に連携し、地域の人々が学校に関わりやすい開かれた体制を整えることで、ほかの学校にはない多様な学びを実現している。
同町ではさらに、町や中学高校、PTA、町内団体・企業などを委員とする「魅力化推進会議」が2年度に設置され、独自の「住田高校魅力化構想」を策定して生徒らの成長をさまざまな角度からサポートしている。教職員やPTA、同窓会、住田中学校の関係者らで構成する同校教育振興会も、芸術・文化、部活動補助、学校魅力化といった各種事業に取り組んでいる。
入学者が20人を割った本年度は、少子化問題のさらなる深刻化も見据え、町唯一の高校存続に向けた動きが活発化している。
町教委は本年度、気仙や近隣の遠野、釜石両市の中学校への住田高のPRに例年以上に力を入れたほか、町営ケーブルテレビの住田テレビ協力のもと、学校紹介のDVDを町の予算で作り、7月のオープンキャンパスで体験入学者に配布した。
住田高内では、生徒有志でつくるチーム「住高みらいネット」が立ち上がり、オープンキャンパスや同町夏まつりで生徒の声を届けるなど母校の魅力を強く発信。もともと盛んな地域ボランティア活動に加え、住高ハウスでの校外の取り組みにも生徒たちは自発的に参加。こうした活動を町や地域が後押しすることで、横のつながりがより強固になっている。
魅力化推進会議のメンバーで、まちづくりに携わる一般社団法人SUMICAの村上健也代表理事(58)=世田米=は「町の地域創造学を含め、ここ数年の魅力化の積み重ねがあり、学校を残すため自ら行動を起こす生徒も表に出てきて、新たなフェーズに入ったと感じる。このまま終わらせるにはもったいない。私たちにできることは今までと変わらないが、生徒たちの取り組みがこれまで以上に一般の人たちの目に触れる機会を増やし、興味を持ってもらうことが重要」と語る。
全国でも、住田高と同様の課題に直面している高校は少なくない。
千葉さんは「教育とはなんなのか、人が人として生きるとは本来どうあるべきかということを、みんなで見つめ直す時期に来ている。突破口となる取り組みを住田高が先駆けて実践することで、共感や連携が生まれると思う」と地域を超えたつながりの大切さも強調する。
岐路に立つ住田高校──。松高教育長は「住田高は、町だけでなく、気仙地区内外の広い地域にとって必要な高校。今後も地域と連携しながら高校の魅力を発信し、存続に向け最大限の努力を続ける」と力を込める。





