「2度目の夏」被災森林に変化 再生への取り組み急務 大規模林野火災 きょう1年半 私有林支援充実の理解鍵に

▲ 令和7年8月

令和8年8月

 延焼範囲3370㌶と昭和39年以降で国内最大面積に及んだ大船渡市大規模林野火災の発生から、26日で1年半を迎える。「2度目の夏」を迎えた被災森林は、一部で伐採が進む一方、激しい焼損被害に見舞われた区域では立ち木の腐朽進行も散見されるようになった。今後は、私有林の伐木や森林再生の各促進が鍵となる。市が森林保険相当額を補助するなど支援を充実させる中、所有者のさらなる事業理解が不可欠。市が掲げる「いわて・大船渡モデル」の確立に向け、森林再生を広く実感できる取り組みをどう打ち出すかも注目される。(佐藤 壮)


 東海新報社では発災以降、被災した赤崎、綾里地区で定期的にドローンによる撮影を行っている。出火直後、樹冠火を伴う激しい焼損に見舞われた綾里の小路、八ヶ森両地域における昨年8月と今年8月の比較では、一部で治山工事や造成林事業に伴う伐採が進み、森林再生に向けた着実な歩みがうかがえる半面、これまで緑色だった葉の変化や、幹や枝の白色化が進んだ観もある。
 大規模林野火災で被災した森林に頻繁に足を運び、調査活動を重ねる千葉大学国際高等研究基幹の峠嘉哉准教授は「スギの残存領域において、ドローンの写真からも、1年目の夏では葉が緑だったが、2年目の夏では赤茶けてきたものがあるように見える。地上で見た際にも、幹が白くなってきた領域も多く、広大な森林において明らかに腐朽が進行していることがうかがえる」と語る。
 一方で「現状では、倒木が顕著に進行した領域は見られない」とも指摘。過去の他の林野火災事例を踏まえ、今後数年をかけてさらに腐朽が進み、倒木が顕著になる状況も考えられるとし「今は『林野火災からまだ1年半』という位置づけであり、現段階でできる限り多くの領域の伐木が必要な状況」と話す。

 国の激甚災害指定に基づく森林災害復旧事業では、被害木などの伐採・搬出、伐採跡地の造林、森林作業道の整備を行う。被災地全体では、伐採・搬出1248・7㌶、跡地造林1279・2㌶について、国の事業査定を受けた。期間は令和10年度まで。作業路開設も含め、事業費は117億5772万円を見込む。
 今月21日に開かれた市議会臨時会で、森林所有者に対する森林保険の保険料補助にかかる経費を盛り込んだ補正予算が可決された。スギの場合、10年間の保険料は1㌶あたり7万円程度となっており、再造林を行う私有林に対して100%相当額を補助することにしている。
 所有者の森林保険加入は、森林災害復旧事業を進める際の必須条件の一つだが、昨年秋時点での市側の説明では、所有者が費用を負担する内容だった。今後は、同事業以外で再生する私有林も補助対象とする方針。伐採を終え、植林に入ってからの補助を見据える。
 同事業では、伐採に対する所有者負担はない。市はすでに下草刈り費用も補助することにしており、昨年所有者に実施した森林災害復旧事業を希望するかどうかの意向調査時点から、支援策の充実が進む。
 被災森林の約50%に当たる約1700㌶の人工林から、条件に沿って事業適用区域を絞り込む。天然林は、天然更新による自然復旧を基本とする。昨年9~10月に実施した意向調査の対象は1831筆で、面積は1709・37㌶。森林災害復旧事業を「希望する」と回答したのは、813筆(44・4%)で、面積は783・74㌶(45・8%)だった。今後は「希望しない」「未回答」の所有者にも支援拡充の理解が進み、森林再生への意欲向上につながるかが注目される。
 伐採木は、一次置き場から製材工場やバイオマス発電所などに運搬するまでの経費は、伐採した木の売却費から差し引かれる流れとなる。年数の経過とともに木材の品質低下も懸念される中、よりスムーズな事業体制の確立や、伐採木の有効活用への関心も高まる。
 森林保険の補正予算額は13㌶分に当たる91万円。被災面積から見ればわずかであり、本年度は境界の確認や立ち木の伐採が中心となることの表れでもある。伐採や地ごしらえ、植栽だけでなく、シカ対策の防護網設置など多様な取り組みが控える中、作業に関わる人材確保の重要性も日増しに高まっている。
 森林復旧に向けた取り組みなどについて協議する大船渡市林地再生対策協議会は、きょう26日午後1時30分から市役所で開かれる。市や県、三陸中部森林管理署、県森林組合連合会、気仙地方森林組合で構成し、今年5月以来の開催。協議内容は▽森林災害復旧事業等の実施状況▽第2回被災私有林の森林復旧にかかる意向調査の実施▽今後の主な予定──となる見込み。