「干し鮑文化」価値再構築 大船渡商議所 文化庁採択受け事業始動 食文化ストーリーの創出・発信へ
令和8年8月30日付 7面
大船渡商工会議所は本年度、文化庁事業の採択を受け、大船渡をはじめ三陸沿岸に伝承される「干し鮑文化」の学術的価値再構築事業に取り組む。令和6年度から「鮑=大船渡」「あわび王国おおふなと」などアワビ関連の発信事業を展開する中、本年度は高級食材として知られる「干鮑」に着目。加工技術や民俗信仰、海洋交易史の各側面などから、文化財登録や地域活性化につながる食文化ストーリーの構築を目指す。(佐藤 壮)
文化庁の「食文化ストーリー」創出・発信事業は、特色ある食文化の継承・振興に取り組む地域や団体などを支援し、文化振興や地域活性化につなげようと、毎年度募集している。本年度は、全国6団体が採択を受けた。
大船渡商議所は6年度以降、復興庁の「新ハンズオン支援事業」を活用し、大船渡市内で漁獲、加工されるアワビに着目した地域活性化事業に取り組んできた。アワビ関連事業を主力とする三陸町越喜来の㈲田村蓄養場三陸営業所、綾里の元正榮北日本水産㈱と野村海産㈱の各技術力を地域資源として効果的に活用しながら、産業の活性化や交流人口拡大につながる事業を進めた。
エゾアワビは岩手県が全国一の漁獲量を誇るが、量は減少傾向にある。磯焼けに起因する餌不足や漁業者の高齢化、担い手不足が指摘される。一方、市内では、育成から漁獲、加工、調理と幅広い産業がそろう強みがあり、地域資源としての価値が高まっている。
6年度は「鮑=大船渡」のブランディング確立に向け、地元事業所が強みとする技術力などをまとめた冊子を作成。中華料理の中でも明治期から吉浜産干鮑は「キッピン」として知名度が高い中、資源保護や製法確立の足跡についても探った。
7年度は「あわび王国おおふなと」を軸に新規事業を織り交ぜた活動を展開。大船渡東高との連携によるアワビを具材とした調理メニューの提案・販売に加え、帝塚山学院大学(大阪府)などとの「再興あわびカレー」の商品開発、アワビの貝の粉砕材による利活用検証などを行った。
本年度は文化庁の事業を生かし、長年伝承されてきた「干し鮑文化」は、三陸沿岸の自然環境や地域社会の生活実践で形成された「伝統的な水産加工文化」であるとし、独自性の明確化や情報発信の充実につなげる方針。加工技術のみならず、祭礼や風習、江戸時代以降の交易にも着目し、学術的な視点から文化財としての価値の再構築を目指すことにしている。
大船渡商議所では28日、事業の「キックオフ会議」が開かれた。オンラインも含め県内外の有識者や水産機関関係者、民間事業者ら約20人が出席し、来年3月の成果取りまとめに向け、調査研究の全体方針などを確認した。
構成メンバーは今後、民俗信仰、加工技術、海洋交易史の各調査班に分かれて活動する。座長を務める公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター(京都府)の小田滋晃特任主席研究員は「三陸の海洋環境から採捕、地域固有の加工技術、高品質な『干し鮑』、国内外の公益、経済的・社会的価値、祭礼・信仰・贈答文化に加え、『鮑=大船渡』の確立まで、一連の文化体系を明らかにしたい」と協力を求めた。
6年度以降、大船渡商議所は幅広い角度からアワビに関する活動を続けるが、地域内での加工製法伝承といった分野での調査では、資料や情報収集の難しさにも直面した。本年度の調査活動は構成メンバーのみならず、広く住民らの協力も求めながら進める方針だ。問い合わせは同商議所(℡26・2141)へ。






