所有者負担実質ゼロに 大規模林野火災に伴う森林保険料支援 再生意欲喚起へ まずは周知に注力

▲ 森林災害復旧事業の一環で苗木植栽を終えた斜面=三陸町綾里(6月)

 大船渡市は、大規模林野火災で被災した私有林の復旧促進に向け、新たに創設した森林保険補助金制度を利用する際の申請方法を定めた。跡地造林で苗木の植栽後に契約し、支払いを終えた保険料全額を補助する。市は造林後の下草刈り費用も助成し、公的事業の種類を問わず森林再生の所有者負担を実質ゼロとする。森林保険補助の申請受け付けを開始した一方、被災した私有林の大半は事業に着手しておらず、手続きのタイミングを迎えるまでに期間が空く中、市は制度創設の周知を通じて、森林再生への意欲喚起を図る。(佐藤 壮)

 

 補助対象は、昨年2月19日、26日発生の大規模林野火災で被災した森林所有者。森林災害復旧事業、森林整備事業、いわて環境の森整備事業のいずれかを利用して跡地造林で苗木を植栽し、さらに保険期間が10年の森林保険契約を結び、その支払いを終えると申請できる。
 補助対象経費は、森林保険加入に伴う保険料全額。森林整備、いわて環境の森整備の両事業で県からの助成金を受ける場合は、保険料から助成金を差し引いた額となる。土地1筆につき1回が限度。スギの場合、10年間の保険料は1㌶あたり7万円程度となっている。
 申込時は、保険料領収書の写しなどが必要。補助金の交付申請は、原則として1年以内とする。
 申請者は必要書類を添えて申請書を出し、受理した市は申請内容を審査したうえで、交付決定を申請者に通知。これを受け、申請者が請求書を市に提出すると、補助金が振り込まれる。
 本年度の交付申請は来年2月1日(月)までとするが、翌年度以降も毎年4月1日から受け付ける予定。申し込みや問い合わせは、市役所3階の林野火災対策局で対応する。
 市は先月の市議会臨時会で被災私有林13㌶分に当たる補助金91万円を、本年度の一般会計予算に補正計上したが、被災森林全体から見ればわずかな面積にとどまっている。多くの被災私有林では伐採にも入っていない中、申請は植栽による保険料の確定や支払い後に行われるため、助成は来年度以降に本格化する。
 こうした中でも、市は制度創設の周知に力を入れる。市林野火災対策局の大和田智次長は「今月、2回目となる森林再生の意向調査を控えている中で、森林所有者が安心して森林再生に踏み出すきっかけの一つになれば」と狙いを語る。
 大船渡市大規模林野火災の延焼範囲は3370㌶と、昭和39年以降に国内で発生した林野火災では最大に及んだ。国の激甚災害指定に伴い、森林災害復旧事業では伐採や跡地造林に対する費用の所有者負担はない。
 一方で、同事業をはじめ国庫補助を活用している事業は、森林保険への加入が必須条件。加入年数は、県では10年としている。
 昨年9月に開催した森林復旧に向けた地域説明会では、森林災害復旧事業に関する説明の中で、森林保険料は所有者負担とする方向が示された。一方、出席者からは、負担軽減を求める意見が出た。
 翌月に実施した被災した森林の復旧に関する1回目の意向調査では、調査面積1710㌶に対し、復旧希望を示した所有者が持つ森林は約780㌶だった。再生に伴う費用負担が、希望が伸びなかった要因の一つとされる。
 こうした中、市は、将来的な災害発生時における森林所有者の経営安定を図るとともに、経済的負担の軽減を通じて私有林の持続的な再生を支援しようと新たな事業を創設。補正予算計上と併せて、制度設計を進めてきた。
 跡地造林後、苗木が成長するまでの一定期間において、下草刈りが必要となる。この費用も当初は公的支援の有無が不明だったが、市の支援により、所有者負担なしで進めることになった。同事業を選択しない私有林などで活用される見込みの森林整備、いわて環境の森整備の両事業でも同様の支援を行うことにしており、公的事業を利用した森林再生に対する所有者負担は実質ゼロとなった。
 昨年の地域説明会以降、市独自の事業制度が整い、森林所有者の支援が大幅に拡充。また、被災森林の調査や研究が進む中で、年数が経過するうちに枯れた被災木が倒れる危険性が高まり、将来的な森林利活用への影響が懸念されるようになった。森林再生事業に対する理解をどれだけ所有者に浸透させられるかが、被災地全体の復旧・復興に向けた当面の鍵となる。