命守る防災への思いも託す 津波伝承会 市に資料一式寄贈

▲ 贈呈式で災害から命を守る大切さを語る齊藤代表

 大船渡市の大船渡津波伝承会(齊藤賢治代表)は、東日本大震災の経験と教訓を後世に伝えようと、大船渡町の市防災観光交流センター「おおふなぽーと」で展示していた映像や写真などの資料一式を市に寄贈した。5月末に語り部活動に一区切りをつけ、まちを襲う津波の映像などの引き受け手を探していた。災害から命を守る意識を根付かせるべく、伝承活動に奔走してきた齊藤代表(78)は「『逃げてほしい、そしてあなたに助かってほしい』というメッセージを市にも伝えてもらいたい」と、思いを込めた〝バトン〟を行政に託した。(高橋 信)

 

 寄贈した資料は映像や写真、パネル、紙芝居など70点を超え、25日に市役所で行われた贈呈式で、齊藤代表が渕上清市長に目録を手渡した。懇談では齊藤代表が自ら撮影したまちを襲う震災直後の津波の映像を流し、15年前の「あの日」を振り返った。
 渕上市長は「震災の記憶と教訓を未来に継承するための貴重な記録で、市にとってかけがえのない財産となる。震災を経験し、昨年2月には大規模林野火災にも見舞われた。しっかりと活用し、防災・減災への取り組みを一層推進していく」と語った。
 岩手の銘菓「かもめの玉子」を製造・販売するさいとう製菓㈱の専務を務めていた齊藤代表。昭和8年の昭和三陸地震津波を経験した父から津波の恐ろしさを教わって育ち、12歳の時にチリ地震津波に遭った。「父が悲痛な声で『逃げろ』と叫んでいた。津波が迫っており、あと1分遅かったら一家全滅していた」と率先避難の重要性を胸に刻んだ。
 しかし、東日本大震災では逃げ遅れるなどして犠牲となる人が多く、「伝えねばならない」と決心。自身が撮影した映像を活用し、語り部活動を始めた。
 平成24年に一般社団法人を立ち上げ、25年3月11日に赤崎町のさいとう製菓中井工場(現・かもめの郷お菓子ファクトリー)内に「大船渡津波伝承館」を仮オープン。資料展示のほか、防災・減災のイベントなどを手がけた。
 全国各地に出向き講演も重ね、語り部として教訓を伝えた人数は4万を超える。おおふなぽーとに拠点を移して活動を続けてきたが、時間の経過とともに利用が減り、自身の年齢も考慮し、今年5月、伝承会の活動にピリオドを打った。
 市は寄贈を受けた資料を保管し、今後は企画展示などで活用することとしている。
 齊藤代表は「一番大切なのは逃げること。市には私の思いを受け継いでくれればと思う」と願う。