「材質劣化の兆候を確認」 大規模林野火災被災木の品質調査 県林業技術センター 高い焼損度で乾燥、虫害目立つ

▲ 焼損度合いが高い被災木が集中する三陸町綾里の八ヶ森周辺(8月撮影)

 県林業技術センターは、大船渡市大規模林野火災から1年が経過したスギ被災木の品質調査の中間報告をまとめた。焼損度が「低」「中」「激」でいずれも強度性能は健全木と比べて同程度だった一方、「中」「激」では乾燥が進行したことによる保水状況の低下と虫害や変色が目立った。同センターでは「材質劣化の兆候を確認」とし、今後も虫害や腐朽が加工に及ぼす影響を調査したうえで、12月末に最終報告を行うことにしている。(佐藤 壮)

 

 この調査は、被災木の焼損度合い別の利用可能性を検討するのが主な目的。同センターに加え、東北大学と千葉大学、京都大学、気仙地方森林組合が連携して実施した。
 今年6月、三陸町綾里の田浜、小路両地域にある市有林で、焼損度別に各10本の立ち木を選び、伐採・造材を行った。焼損度は▽「低」(根元から1㍍以下)▽「中」(同5㍍以下)▽「激」(幹全面の焼損)──の3種類に分類。「低」と「中」は田浜地域、「激」は小路地域から選んだ。
 いずれも、焼損度別に長さ2・1㍍の丸太と円板の試料材を調製。円板状の試料材では含水率を、丸太は強度性能や剥皮・製材時の劣化状況、丸太から加工したラミナ(集成材を構成する挽き板)ではたわみにくさや曲げ、引っ張りに対する強度を調査した。
 丸太の強度性能数値は、気仙地域で産出される健全木と同じ分布内に収まった。ラミナも、集成材JAS(日本農林規格)の基準値を満たした。
 保水状況をみると、「低」の含水率は、健全木の範囲内だった。一方で「中」「激」では、樹木の幹の表皮に近い白太部分に当たる「辺材部」で、含水率が健全木の平均よりも大きく低下している傾向が見られた。今後、樹幹部の乾燥が進行すると考えられ、伐採時における重心の変化に加え、虫害や腐朽などが増しやすい含水率になることによる材質劣化の加速行といった影響が懸念される。
 虫害のうち、「低」は樹皮下部から辺材部にかけてキクイムシが散見されたが、伐採や搬出後に発生したと推測される。穴の開き具合は浅く、変色も少ないため、利用への影響は軽微にとどまるとみられる。
 一方で「中」「激」では、キクイムシに加え、ゾウムシやカミキリムシによる虫害や変色が目立った。立ち木の状態で虫害や変色が生じていたものと考えられ、同センターでは「材質劣化の兆候を確認」としている。
 今後はラミナの「曲げ」「引張」といった破壊試験を通じて、虫害や腐朽などが強度に及ぼす影響を調査。被災木の樹皮下への観察などにより、虫害や腐朽の進行状況も調べ、12月末に最終報告を行う予定。
 同センターでは、昨年度も調査を実施。発災から4カ月が経過した被災木による丸太は健全材と同程度の強度性能で、板材も集成材に利用可能なレベルだった。一方、全体が被災した樹木は樹皮厚が薄く「今後の保水、防虫抗菌などの機能低下に懸念がある」としていた。
 今回の中間報告は、昨年調査時の懸念が現実となり、早期の木材利用の重要性が改めて浮き彫りとなった。また、伐採時における重心の変化も指摘されたことで、施業時の安全対策徹底もさらに求められる。
 昨年度実施した県や市の現地調査では、今回の「中」「激」の被害に当たる森林区域は、被害調査面積3370㌶のうち6割強に当たる2060㌶超に及ぶ。
 激甚災害指定に伴う人工林を中心とした市の森林災害復旧事業では、伐採・搬出1248・7㌶、跡地造林1279・2㌶について、国の事業査定を受けた。本年度中に約200㌶を発注する計画だ。