震災前の記憶 未来につなぐ 神戸大学の院生・学生ら 市街地模型を3Dデータに(別写真あり)
令和8年10月23日付 2面
兵庫県神戸市にある神戸大学大学院工学研究科・工学部の建築学専攻・建築学科で学ぶ大学院生と学生8人は、東日本大震災前の気仙両市の街並みを500分の1サイズで再現した市街地模型と、そこに立てられた「記憶の旗」の3Dデータ化を進めている。学生らは旗に記された人々の記憶と模型の写真を記録して「記憶のデジタルツイン」として残し、震災前の記憶を未来につなぐ。(三浦佳恵)
市街地模型は、震災復興支援「『失われた街』模型復元プロジェクト」として、同研究科の槻橋修教授と、同大学槻橋研究室が企画・制作。建築を学ぶ全国の学生たちが協力し、岩手は平成24年から気仙両市を含む9市町村19地域の模型が作られた。
模型は発泡スチロール製で、1㍍四方のパネル上に地形や建物、道路、河川などを再現し、これらを組み合わせて震災前の街並みを構成。模型を使ったワークショップも開き、地域住民から当時の話を聞いて思い出の場所に「記憶の旗」を立て、模型に着色した。
気仙両市の模型は現在、陸前高田市の一般社団法人トナリノ(佐々木信秋代表理事)が保管。一部は、高田町のコワーキングスペース・ヤドカリで展示している。
震災前の懐かしい街並みを再現した模型とあって、発災から15年を経た今も人々の関心を集める一方、経年劣化が進行。こうした中、同大学の建築学専攻・建築学科の槻橋・浅井研究室などが模型の3Dデータ化に着手し、宮城県気仙沼市等で取り組んできた。
今回は、トナリノが保管する陸前高田市高田町と気仙町、大船渡市大船渡町の模型をデータ化するため、同研究室の大学院生4人と学生4人がヤドカリを訪問。20日から26日(月)までの日程で作業を進めている。
データ化は、パネルを載せたブロックごとに実施。ブロックは陸前高田市が29個、大船渡市が8個あり、模型に立てられた旗は陸前高田市分だけでも3600本余りに上る。
学生たちは旗を1本ずつ抜き取り、立てた位置や旗に書かれた内容を一覧表に記載し、データとして入力。旗を抜いた模型はデジタルカメラでさまざまな角度から200カットを撮影し、画像は専用ソフトで3Dデータに合成する。
初日の20日は、8人が役割を分担して作業。模型に込められた人々の記憶を後世に残そうと、丁寧に記録、撮影などに当たった。
同研究室の修士1年・近藤努さん(23)は「この模型には、震災当時の状況なども残されており、われわれにも勉強になる。模型の情報を大事なものと受け止め、後世につないでいくために責任を持って作業を進めたい」と力を込める。
3Dデータは完成後、機会を設けて地域住民らに公開する予定。VR(仮想現実)を用い、模型の街並みをリアルに体験できる形も見据える。






