島津さん(猪川町)が最高賞受賞 第79回岩手芸術祭文芸祭「詩の大会」 亡き友人への思いつづる

▲ 岩手芸術祭の文芸祭「詩の大会」で文芸祭賞を受賞した島津さん

 第79回岩手芸術祭の文芸祭「詩の大会」で、大船渡市猪川町の島津憲一さん(78)=山形県出身=が最高賞の文芸祭賞を受賞した。同大会に初めて応募した、亡き友人への思いをつづった詩「弧空の雪」が高い評価を受けた。「天国にいる彼に、良い贈り物ができたと思う。今頃、空からこちらを見て、笑ってくれているんじゃないかな」と、受賞の喜びをかみしめるとともに、さらなる飛躍を誓っている。(栗村勇翼)

 

 島津さんは5年ほど前、当時勤めていた山形県内の薬局を退職したが、喜寿を迎えたのを機に昨年11月、薬剤師としての再スタートを決意。宮城県東松島市で東日本大震災からの復興支援に携わった経緯から、仕事を通して被災地に寄り添いたいという思いがあったため、その中でも、まだ縁のなかった大船渡を、あえて新天地に決めた。
 現在は三陸町越喜来のとうごう薬局越喜来店に勤務。「仲間づくりのために」と、住田町の一般社団法人文化政策・まちづくり学校(通称・ふるさと創生大学、千葉修悦代表理事)主催の教室で詩をはじめとした創作活動に打ち込んでいる。
 今回、島津さんが応募したのは、約20年前の4月に末期がんで死去した友人に思いを馳せて制作したもの。埼玉県内の病院で息を引き取った友人の火葬に参列し、山形に戻る間、季節外れの雪が舞った光景が印象に残り、言葉を紡いだ。
 「ウワラ ウワラ」。出身地の東京都を離れ、山形の山村に移り住んだ島津さんの友人は、この地に雪が降る様子を、独特な擬音で表した。島津さんは友人の言葉を借りながら、詩を執筆。友人が亡くなった直後に見た雪景色の描写から構成した。
 自然農法に打ち込み、山形で思うがままの人生を送った友人。突然の余命宣告にも動じず、誠実さを貫いた人柄を「いつも輝いていたあなた」「死の間際まで いたわりを忘れなかった」といった言葉で回顧した。
 「人は一生のうち どれだけ 思い通りに生きられるだろうか」。地元を離れ、新天地で力強く人生を全うした友人への敬意を詩中の一言一句に込めた島津さん。最後は、改行や空行で余白を持たせながら、友人が旅立った日を印象づけるように、「しろく やさしく ゆきがまう」と〝透き通った雪の世界〟を表現した。
 また、作品名は空の雄大さをより強調する意図で、「虚空」の言葉に「弧」を当てた造語を使用。タイトルや情景描写に用いた擬音、文章構成力に個性が光り、評価につながった。
 9月中旬に結果が届き、島津さんは、10月下旬に花巻市の花巻なはんプラザで開かれた「詩の大会」に出席。詩を発表するとともに、合評会にも臨み、その場で表彰を受けた。
 「人に勧められて出品した経緯もあるから、結果を聞いてもはじめは実感がわかなかった。でもせっかくいただいた素晴らしい賞だから、大切にしたいし、これからも書き続けたいと思う」と島津さん。「ここで暮らすようになって、三陸の自然をとても気に入っている。いつか三陸を題材に詩を書きたい」と、今後の創作意欲を語った。