事前防災徹底へ緊急要請 今月始動の防災庁 水、食料、携帯用トイレ備蓄など 

 大規模災害の対策強化を目的に今月2日に発足した防災庁は、国民や地方自治体に向けて「事前防災徹底のための緊急要請」を出し、備蓄の充実などを呼びかけている。5日は、平成23年の東日本大震災を受けて制定された「津波防災の日」。気仙沿岸では防潮堤をはじめハード整備が進んだ一方、行政や自主防災組織などの対応だけでは限界もある。改めて各世帯や職場における災害への備えの見つめ直しが求められる。(佐藤 壮)

 

きょう「津波防災の日」

 

避難時にすぐ持参できるリュックなど日頃の備えが重要に(10月4日、大船渡市防災訓練)

 細野豪志防災大臣名による緊急要請では、政府として防災庁を設置し、大規模災害の発生時には国や都道府県、市町村が一丸となって災害対応に全力を挙げる姿勢を掲げる一方、国難級の災害では、行政だけによる対応には限界があるとし「国民一人一人が『自らの命は自らが守る』ことが必要。みなさまがしっかり備えることで、被害を大きく減らすことができる」と呼びかける。要請の主な内容は別掲の通り。
 家屋の耐震診断に関しては、昭和56年以前に建てられた家での実施を求める。「改修が必要となり、費用負担が大きいときには、寝室やリビングなど一部だけでも実施して、家の中に安全な空間をつくることも考えられる」としている。
 大地震時には「固定していない家具は必ず倒れると思ってほしい」と注意を喚起。家が無事でも、家具の下敷きとなって犠牲となるケースも挙げ、家具・家電の固定や配置の見直しを求める。
 さらに「すぐに助けが来るとは限らない」と指摘し、水・食料、携帯用トイレ等の備蓄は最低3日間分、可能であれば1週間分を要請。飲料水は、食事に使うものも含め「1人当たり1日3㍑必要」とする。携帯用トイレやティッシュ、トイレットペーパー等の生活用品も備えるほか、日頃、使っている用品を多めに買い、使ったら補充する習慣も促している。
 各市町がまとめているハザードマップを通じ、家庭や職場における災害時の危険性を把握する行動の大切さを掲げ、避難場所や避難経路を確認するよう強調。非常持ち出し品は「すぐに必要」「ないと困るもの」を考え、リュックサックなどに入れ、玄関といった持ち出しやすい場所に置くよう事前準備を求める。
 気仙3市町では先月から今月にかけ、巨大地震・津波や住宅密集地での火災発生を想定した防災訓練が行われた。要請では、地域単位での防災訓練参加に加え、安否確認や炊き出し、簡易トイレの利用といった避難生活体験に加え、近隣住民との協力関係づくりも掲げている。
 一方、地方自治体向けには「事前防災の徹底が不可欠」とし▽防災人材の育成(研修・訓練)▽受援体制の確保(国の現地対策本部の設置スペースの確保を含む)▽避難生活環境の改善(指定避難所、備蓄、トイレ、キッチン、ベッド、バス)▽災害協定の締結・実効性確保▽災害中間支援組織▽個別避難計画の作成▽帰宅困難者対策▽応急仮設住宅用地候補等の事前選定──を求める。
 毎年11月5日は「津波防災の日」。平成23年3月の東日本大震災津波を受け、同年6月に制定された「津波対策の推進に関する法律」で、広く津波対策についての理解と関心を深めることを目的に定められた。また、27年12月の国連総会では、日本はじめ142カ国の共同提案をもとに、この日を「世界津波の日」とし、各地でさまざまな防災の取り組みが行われる。
 震災から15年余が経過し、気仙では防潮堤や高台につながる避難路ほかの整備が進んだ。一方で、ウイルス感染や暑さ、寒さの各対策、高齢化が進む中での「共助」のあり方といった課題も顕在化。さらに全国各地で頻発する豪雨や大規模林野火災など、地震・津波にとどまらない防災体制が求められている。