利用先拡大へ気仙巡る 被災木の現地視察会 県内外の建築関係者ら参加 きょうまで(別写真あり)

▲ 被災林から出た丸太を板材にする加工現場を見学=住田町世田米

 昨年2月に発生した大船渡市大規模林野火災の森林再生に向けた被災木利用の促進を見据え、県による「被災木の現地視察会in大船渡」が5日、住田町や三陸町綾里などで行われた。建築・建設分野に携わる設計者や企業関係者が製材工場や被害地域を回り、自らが関わる業務やプロジェクトでの活用などを探った。6日も行われる。(佐藤 壮)

 

 大規模林野火災の被害面積は3370㌶。市は森林災害復旧事業に向け、伐採・搬出1248・7㌶、跡地造林1279・2㌶について、国の事業査定を受けた。本年度中に約200㌶の事業発注を見込む。
 森林の多面的機能回復に向けては、被災木の伐採・搬出と、それに続く迅速な再造林が欠かせない。一方で、事業面積が広大に及ぶ中、搬出される大量の被災木の「出口(利用先)」の確保が大きな課題となっている。
 県は7月にも、都内で林野火災・被災木利用セミナーを開催し、被災木の強度に関する講演や民間企業が連携して立ち上げた「TEAM 森林再生大船渡」の最前線の動き、森林再生に携わる企業側のメリットなどを発信。今回は、被害現場から製材所、実際の被災木が使われている事例と〝川上から川下まで〟を視察し、各種取り組みに理解を深めてもらおうと企画した。
 県内外の建設、建築、製材、設計の関係者ら約20人が参加。JR盛岡駅に集合し、被災木が生かされている同駅での改良工事を見学したほか、木製道具を利活用している盛岡市内の学童保育施設も視察した。その後、バスで住田町に入り、被災木を加工している世田米の㈲森谷材木店(森谷潤代表取締役)を訪ねた。
 工場内の様子は同社の大苗仁技術部長が説明し、被災林から出たスギを中心とした丸太を、建築向けの板材にする流れを公開した。伐採現場から納入されるのは樹皮が焦げていない丸太がほとんどで、被災していない森林から出た丸太と状態や加工方法は変わらない。板材は主に、関東に出荷している。
 参加者は用途に応じて板の厚さを調整して加工する作業などを熱心に見学。端材はバイオマス燃料向けのチップや、おがくずとして利用される現状にも理解を深めた。「内外装材だけでなく、構造材としても使われているか」「被災木の納入を指定しても、順調に入ってくるのか」といった質問も出た。
 「TEAM 森林再生大船渡」に参画し、視察会に同行した木材全般や建材類の販売などを手がける物林㈱新事業推進部=東京都=の勝田幸仁朗部長は「伐採から加工のプロセスが分かることが大事。地方は丸太を売りたいが、中央は製品が欲しい傾向があり、その円滑な調整が重要。製材工場の数だけやり方がある。この地の製材工場でできることを把握するのも大切」と話していた。
 三陸町綾里では、林野火災の被災現場に加え、発災直後からの動きなどに関する情報を示す山林火災伝承施設、木造で整備された建設型の応急仮設住宅も訪問。発災から20カ月が経過した現地の状況を目に焼き付けた。
 同日は大船渡市内で「被災木のレクチャー会」に加え、現地の事業者・自治体関係者との交流会も開かれた。6日も市内で被災木を構造材・外装に用いた飲食店を見学するほか、陸前高田市では構造材を手掛ける木材加工事業所や東日本大震災津波伝承館などを巡ることにしている。