キャッシュレス雑記

 財布の中の小銭が妙に偏ることがある。ある時、財布をのぞいたら500円玉が3枚も入っていた。いつもならうれしいのだが(妙なもので千円札1枚よりも500円玉2枚の方が〝うれしい度〟が高い)、その時は会社の自動販売機で飲み物を買おうとしており、何が悪かったのか新旧どちらの500円玉も受け付けてもらえないという状況だった。
 何度入れても返ってくる500円玉。財布には千円札も100円玉もなく、あるのは10円玉が数枚と、残りは5円玉と1円玉がじゃらじゃら。これは昼休みにコンビニへ行くまで飲み物なしか…と覚悟を決めたとき、自販機のうちの一つがキャッシュレス決済に対応していることに気づいた。
 まさに渡りに船、砂漠にオアシス。いそいそとスマホに専用アプリをダウンロードし、支払い設定でだいぶ手こずったものの、何とか飲み物を購入することができた。
 その時の筆者の脳内では、「文明開化」の文字が創英角ポップ体で虹色に輝いていた。スマホをピッとすれば飲み物が買える自販機が会社にある。素晴らしい。飲み物を買いに行くたびに財布から小銭を取り出す手間とも、いざ行ってみたら10円足りなくて飲みたいものが買えない悔しさともおさらばだ。キャッシュレス決済、万歳!
 …実を言うと、社会人になってしばらくの間、キャッシュレス決済というものを忌避していた。明確な理由は特にない。「手元にお金がないのに買えるなんて、なんか怖い」という、単なる〝食わず嫌い〟である。特に、「○○ペイ」のようなスマホ決済に手を出したのは本当にここ数年のことだ。
 あんなに遠ざけていたのに、一度その便利さに触れてしまえば後は野となれ山となれ。今ではスマホ決済に頼りきりで、まれに決済方法が現金のみだった場合に、ハラハラしながら財布の中身を確かめるような有様である。(麻)