『住田にて』に触れて

 過日、若手映画監督と俳優たちが住田町に滞在し、短編映画を制作した。その上映会を取材し、作品を鑑賞させてもらった。普段訪れている地域も、スクリーンを通して見るとまた違った魅力を感じた。
 来町したのは、映画監督・堀内友貴さん(28)=東京都、同・田中さくらさん(26)=長野県、俳優・花純あやのさん(27)=東京都、映画などで音響を手がける堀内萌絵子さん(25)=同=の4人。現在、町内で滞在体験を行っている人物の声かけによって実現した、いわゆるアーティストインレジデンスだ。
 町内の〝名所〟を回り、住民と交流しながら作り上げた映画『住田にて』。制作期間こそ短かったが、完成した作品は素晴らしいものだった。
 派手な演出があるわけではないが、ゆったりとしたトーンの中に笑いも織り込まれていて、哀愁を感じながらも時折「クスッ」としながらスクリーンを眺めた。
 「音」にもこだわりがあった。川の流れ、車の走行音、飲食店で食器が重なる音、正午のチャイム、午後3時になると流れるラジオ体操。普段は何気なく耳に入り、無意識のうちに脳内で処理されている音も、映像の中で強調されることで、まちの〝息づかい〟として感じることができた。
 表情やしぐさ、言葉──。文章や写真とは異なる、映画という媒体だからこそ伝えられるメッセージがあった。
 上映後、「撮影を抜きにしても、また来たいまち」と、堀内友貴さんが話してくれた。訪れるたびに、きっといろんな魅力が見えてくるはずだ。若き才能は、次はどんな視点でこのまちを捉えてくれるのだろう。一ファンとして、勝手に「続編」を期待している。
 余談だが、出演していた地域の皆さんの演技力には脱帽した。普段、話している時と変わらない姿のまま〝地〟で映画に登場できるとは。俳優の素質ありではないだろうか。(清)