文化と誇りを見つける旅

 干し鮑文化とは──。大船渡商工会議所は本年度、文化庁事業の採択を受けて、学術的価値の再構築事業に取り組んでいる。加工技術や民俗信仰、海洋交易史の各側面などから、食文化ストーリーの構築を目指す。
 同商議所が所有する木造千石船の復元船「気仙丸」の陸上展示が始まったのが5年前。以降、三陸沿岸で漁獲・加工され、中国などで高級食材として知られる干鮑を見つめ直す取り組みが進む。
 再構築事業は本年度スタートしたが、これまで事業メンバーの一人として関わった立場では「第3部」という感覚でいる。令和6年度は「鮑=大船渡」のブランディング確立、7年度は「あわび王国おおふなと」を軸に、新たな料理開発や冊子作成などに取り組んだ。
 再構築事業では海洋交易史の調査班に入った。以前、本欄で触れたが、干鮑に関する資料は、大船渡市内では少ない。これも連載中の気仙丸企画で取り上げたが、千石船による太平洋側の海運、交易を詳細に伝え残す資料探しに苦労する。図書館では足りず、地域を訪ね歩く大変さ。いわば苦労の2乗ならば…6、7年度より何倍もの困難に直面するのだろうか。
 一方、地元内外の人々が身近な習慣を文化としてとらえれば、その地域の活性化につながる。生活の一端を見つめ直し、過去を振り返ることで、未来に伝え残す〝宝〟が見つかる──。
 そう信じて、まだ針路は正確には定まっていないが、海洋交易という船(気仙丸のように風力で進む帆船をイメージしている)に事務局の商議所職員らと乗り込んだ。不安もあるが、過去2年間の経験によるものだろうか。新たな発見や気づき、先人の足跡に触れるのは、楽しみでもある。
 さらに、別の思いもある。大船渡湾内でよく見かけ、産業を支えるサンマ船やコンテナ船、セメント運搬船…。船の歴史や携わる人々の情熱に触れ、書物や映像に残す大切さ。文化や誇りは、身近な場所にある。(壮)