思い格別の新作コーヒー
令和8年1月10日付
「おそらく日本で初めてのコーヒーになると思う」。
陸前高田市高田町のカフェ「東京屋カフェ」のオーナー兼店主の小笠原修さん(64)から取材依頼の電話があり、開口一番そう告げられた。
酒かすで発酵させた豆を使った自家焙煎コーヒーの提供を始めるとのこと。酒かすを用いるのは全国的になく(同店調べ)、さらに地元の酔仙酒造㈱の製品化できない酒かすを利活用するという。独自性や廃棄品を資源にかえる意義に心ひかれ、「行きます」と二つ返事で答えた。
昨年12月、店で対応してもらい、企業秘密という製法のごく一部を教えていただいた。はじめは酒かすでコーヒー生豆を発酵させるという珍しさに的を絞って話を聞いていた。ただ次第に焦点はそのメニューを開発するいきさつに変わった。
「発酵についてゼロから勉強し直すところからだった。でも絶対完成させようと思っていた。絶対諦めたくなかった」。何事にも真剣な小笠原さんの言葉に、より熱が乗っているように感じた。
なぜか。それはメニュー化の提案を、小笠原さんの同級生で、親友の息子さんらから受けたからだった。その小笠原さんの親しき友は、東日本大震災で亡くなった。
小笠原さんによれば、その息子さんは父とうり二つという。「(亡き親友から)頼まれているような気がした」との使命感を胸に、構想と試作に時間をかけた。高級感あるコーヒーの風味に、酒かすの柔らかな香りが乗っかり、唯一無二の味を楽しめる。
「天国にいる彼も喜んでくれていたらうれしい」と小笠原さん。純米酒の酒かすを使った第1弾は昨年12月末に提供が始まり、酔仙酒造の吟醸や大吟醸の酒かすを使った第2弾は2月ごろから味わえるという。あす11日で震災発生から14年10カ月。時間は経過しているが、亡き人への思いに風化はない。そんなストーリーが〝隠し味〟の一杯となっている。(信)






