武満徹・没後30年
令和8年5月23日付
今年は作曲家・武満徹の没後30年にあたる。身近な例では黒澤明監督の映画『どですかでん』の音楽を担当しているが、それ以上に琵琶・尺八・オーケストラのための音楽『ノヴェンバー・ステップス』で国際的な評価を得た、戦後を代表する作曲家だ。
この曲を初めて聴いたのは高校生の時だったが、非常に前衛的な作風なので、当時は良さがまだわからなかった。改めて聴き直してみると、和楽器独特の音や間の取り方にオーケストラが追随するような、静けさの中にすごみをたたえた曲であり、大人になった今だからこそ面白さを感じられた。
現在は、「東洋と西洋の融合」といった具合で、和楽器の音色を取り入れたポップスも少なくない。一方で、この曲はむしろ和楽器がオーケストラを真っ向から引っ張っていくようでさえあり、単なる和洋折衷には出せないムードが海外でも評価されたのではないかと思った。
武満氏について調べてみると、60~70年代にかけては、安保闘争に参加したりストライキを支持する意見を表明したりと、社会運動に対して明確な考えを持つ作曲家だった。ただ、政治に参画するための手段に音楽を用いることには賛成していなかったという。
音楽が政治や社会運動に与える影響の功罪は、海外でもみられる。昭和38年にアメリカの公民権運動を歌でけん引したボブ・ディランは、翌年以降にそれまでの作風を変えたところ、支持者から激しい非難を受けた。自らの意思で社会運動に参加する文化人は少なくないが、それが創作への障害を生む事態は誰も望んでいないはずだ。
現代では、漫画などを作者の許可なく政治利用するという問題も起こっている。創作物を楽しみ、感化されること自体は自由でなければならない。しかしそれが高じて、作者の望まない形で引き合いに出したりはしないよう、誰もが気をつける必要がある。(齊)






