ハードル高い緊急銃猟

 全国的にクマ問題が深刻化し、気仙でも警戒が強まっている。大船渡市末崎町では4日、市街地に出没したクマを市町村長の判断で発砲できる「緊急銃猟」が実施された。気仙地区で初めて、県内で3例目。筆者の自宅そばにある同町の介護老人福祉施設付近では先月から連日のようにクマが出没していた。駆除されたのはこの個体とみられる。油断は禁物だが、いつ、どこで遭遇するか分からない恐怖が少し和らいだ。実施主体である市をはじめ、市鳥獣被害対策実施隊、警察などの関係機関に心から感謝したい。
 取材担当エリアの陸前高田市では、11月に市主催の緊急銃猟対応訓練が初めて行われた。午前の机上訓練、午後の実地訓練と、関係者が制度の手順を確認する一連の様子を取材し、実際の運用に向けて非常にハードルが高いことが分かった。
 銃猟を実施する際は①人の日常生活圏に侵入②緊急な対応が必要③銃猟以外では迅速な捕獲が困難④住民らに危害が及ぶおそれがない──の条件を満たす必要がある。
 人けのない場所で実施するとは限らず、跳弾の可能性など銃を扱うあらゆるリスクを排除しなければならない。市、猟友会、警察、県などが連携して行う仕組みだが、緊急的に招集された限られる人員で住民の避難誘導、安全確保を迅速に行うのは容易なことではない。発砲までの間、クマがその場に居座り続けるとは限らない。
 リスクゼロで円滑に遂行できるのであれば、住民の安心につながる頼もしい制度といえるが、市主催の訓練で安全確認の徹底や市街地で銃を使用する難しさなどが浮き彫りとなった。
 ただ同時に実施体制の確立に向け、関係者が課題を捉える貴重な機会にもなったと思う。住民の安全確保への各種クマ対策を補完する最後の手段として緊急銃猟を運用できるのか、もうしばらく続きそうな関係者による模索の日々を追いかけたい。(信)