あなたがそこにいたから

 「夜明けの来ない夜はないさ あなたがポツリ言う」「あなたがそこにいたから 生きて来られた」──歌手・松田聖子さんの代表曲の一つ『瑠璃色の地球』。大船渡市大規模林野火災の鎮圧宣言から6日後、陸前高田市で開かれた県立不来方高校音楽部ファイナルコンサートで、この歌を久しぶりに聞いた。
 4月から統合で名称を変える、矢巾町の不来方高は、筆者の母校だ。同校では吹奏楽部に所属していたが、音楽の授業で先生に誘われ、音楽部の定期演奏会や訪問演奏会等での合唱に参加させてもらった。
 今でこそ混声合唱が当たり前の不来方高音楽部だが、あの時期は女声合唱がメインだった。そして、定番曲としていつも間近で聞いていたのが、合唱用に編曲された『瑠璃色の地球』だった。
 終戦から41年後、バブル景気が始まる昭和61年に、20代の松田さんがリリースした曲。
 そのタイトルや、「ひとつしかない 私たちの星を守りたい」というフレーズから、高校時代は〝自然賛歌〟を連想していた。しかし、今改めて歌詞全体を読むと、悩みや悲しみ、争い、自分の弱さなどの「暗闇」に、ほほ笑みや愛、〝あなた〟といった「光」が差す、そんな意味が伝わってくる。
 陸前高田でのコンサートは、まさに、暗い空間に光が差すかのような歌声が響き、聴衆は笑顔の花を咲かせた。ステージ途中で共演した高田高校の生徒は、「多くの人たちを元気づけたと思う」と目を輝かせた。
 不来方高生にとっては、複数会場で行うコンサートツアーの通過点にすぎなかったかもしれない。そうだったとしても、この時期だからこそ、気仙地域に足を運び、歌を届けてくれたことに、大きな意味があった。ただただうれしく、誇らしい。
 最後に、指揮を振った恩師と母校へ──あなたがいなければ、今の自分はありません。ありがとうございました。(仁)