令和8年02月28日付
今年の東海社会文化賞は「食の匠」気仙地方連絡会の皆さまにお受けいただいた▼その土地ならではの郷土料理を個々に極めているばかりか、伝承者の育成にも尽力しておられることに対し、心から敬意を表する▼顕彰式の宴席では、出席した会員の方にご自身の認定料理や郷土菓子にまつわる思い出話を伺ったのだが、そのどれもが興味深かった▼「嫁ぎ先では氏神さまにフノリ汁とけんちんを供える決まりがあって」とか、「8月7日(旧暦7月7日)にはあずきばっとうを7回食べて7回水浴びするものだった」など、まったく初耳の風習もあり、目を見はった▼また「家で婚礼があれば、引き出物のようかんやタイの形をしたゆべしは家族総出で作った」というエピソード、母や祖母、義母の料理の味が忘れられず、「自分も受け継ぎたいと思った」というお話も、しみじみとした気持ちで聞いた▼郷土料理は、土地の慣習と密接に結びついた「伝統文化」であると同時に、何よりも「家族の物語」なのだなあと、つくづく感じ入ったのである▼ゆべし、がんづき、きびだんご、かまもち、なべやき、けんちん汁─郷土料理の伝承とは、レシピさえ引き継げればいいというものではないのだ。それらがどんなシチュエーションで愛されてきたのかを語れる人たち─「食の匠」がいてくれる意義を改めて認識した。






