令和8年09月29日付

 今春、自身の年齢を考慮して活動に区切りをつけた大船渡津波伝承会の齊藤賢治さんが、東日本大震災の経験と教訓を伝えるために使用してきた映像やパネル等の資料を大船渡市に寄付した▼今後は市がこれらを保管し企画展などに活用するとのことだが、普段は多くがしまいこまれたまま、たまに取り出して掲示する…といった使われ方をするだけなら、齊藤さんも本意ではないだろう▼「震災の事実と教訓の伝承」の役割は陸前高田にある津波伝承館に任せるという考え方もできる。ただ同館は県の施設であり、震災を網羅的に解説する場所。〝大船渡の経験〟は誰がどう伝えるかだ▼高台への迅速避難といった生きる知恵を学ぶ機会として、防災観光アドベンチャープログラム「あの日」はある▼また、「3・11伝承ロード」の施設・スポットも市内に点在する。一方、それらは見学してもらう以上の活用はあまりされてこなかった▼近隣自治体と比べ、大船渡はソフト面…特に、公的な語り継ぎの取り組みが弱いことは否めない▼陸前高田では市観光物産協会が震災遺構を解説するパークガイドを養成するなどしてきた。効果的に学んでもらうためには、人がそこに言葉を添えることが重要だ▼震災経験者はやがていなくなる。語りやガイドを通じた「伝承」を、大船渡市がどう考えていくのかが問い直される。