令和7年12月02日付
呼吸障害がある次女を自宅に放置して死なせたとして、母親に実刑判決が下された兵庫の事件、あまりにもむごい▼何がむごいって、娘が数時間おきにたん吸引をしなければならないほど重度の呼吸障害に陥った原因は、生まれつきの疾患や障害ではなく、父親である元夫の暴力によるものというからだ▼元夫は14年前、生後間もない長男を床に投げつけ、傷害容疑で逮捕された。なぜか不起訴となるも長男はその後に死亡。そして翌年、生後2カ月の次女の頭を握りつぶすようにつかんで暴行し、再び逮捕されている▼次女はこのとき障害を負い寝たきりに。母親は離婚して8年間、ほかの子どもも育てながら自宅介護をしていた。ショートステイなども利用していたが支援は限定的で、慢性的な疲労状態にあったという▼それでも責められるのは、虐待し育児放棄した側ではなく、育児していた側なのだ▼裁判長の「介護を怠れば死ぬと分かっていたはず」「周囲に味方になる人はいる。困ったら相談し助けを求めて」という言葉はあまりに空虚だ。現実問題、簡単に相談できて助けが届く社会になっていないのだから▼母親は糾弾され、原因をつくった側は透明化されているのが恐ろしい。長男への傷害の時点で父親が起訴されていたら、娘が寝たきりになることはなく事件は起きなかったかもしれないのに。






