令和7年12月09日付

 昔と比べ、本が読めなくなったと痛切に感じる▼同じことを続けられない。読書だけではなく、家で映画を見ていたりしてもそう。途中でついスマホを触ってしまうのだ▼物事に集中したり一貫した思考回路を維持するのが難しくなる―「ポップコーン・ブレイン」と呼ばれる現象らしい。多くの人がり患する現代病だ▼病というよりは薬物中毒に近いのかもしれない。一番の劇薬は、スマホやタブレットを通じて見るSNSだ▼脳は新しい情報という名の「報酬」を得ると快楽物質のドーパミンを出す。スワイプするだけで次々と画像や文章、ショート動画が出てくる環境では労せずドーパミンを得られるから、刺激中毒になりやすい▼怖い研究結果がある。人の平均的な注意持続時間は20年前の調査では150秒だったが、現在はわずか47秒に激減。脳がすぐさま新しい刺激を求めてしまうような〝配線〟になってしまっているという▼映画館へ行くと必ずと言っていいほど上映中でもスマホを見ている人がいる。物語は面白さを感じるのに文脈理解や時間を要するため、手軽に刺激を得ようと禁断症状が出るのだ▼脳内の回線を「長期報酬型」へつなぎ直すには、勉強や読書、映画鑑賞を済ませてからスマホを見るようにするのが効果的という。実践していたら確かに読書する力が徐々に戻ってきたような気がする。