令和8年10月27日付

 指で〝ちょん〟と触れると、首が上下・左右に振れる。その動きが愛らしく、何度もつついてしまう―▼「くびふりべーご」の通称で呼ばれる郷土玩具「俵牛」のことだ。陸前高田市の玉山金山から産出した金塊や砂金を、米俵にしのばせて運ぶ牛の姿を模した張り子である▼400年以上前に生まれたというが、その製作は20年以上途絶えていた。平成29年度、同市の美術家・熊谷睦男さんと、高田地区コミュニティ推進協が製作講習会を開くようになったのは、その伝統復活と継承を目指してのことだった▼同30年に発足した「高田郷土伝統張子玩具俵牛『くびふりべーご』伝承の会」が、先日の市産業まつりで会員の制作した俵牛を販売していたのだが、その出来栄えに思わず歓声を上げた▼製作会の開始当初は、同市に玩具製作所を構えていた故・村上新太郎さんが作ったようには、なかなかいかないことが見てとれた。細部の再現には時間がかかりそうだと▼だが今回並べられた大小さまざまの俵牛たちは、村上さんの作品となんら遜色がなかったのである▼細かくて根気のいる俵牛作りを粘り強く続けてきた会員の方たちが〝職人〟の域に達しつつあり、それぞれの個性まで発揮していることに感激しながら、自分も一つ買い求めた。実家にある古い俵牛と親子のようにして並べ、伝統の復活を喜んでいる。