令和8年01月23日付
非常に奇妙だ。違和感がある▼何の落ち度もない女性を放火で焼き殺した男が懲役11年。あおり運転で4人死傷の男は懲役18年。そして山上徹也被告に言い渡された判決は、無期懲役▼人を殺したのだから罰を受けるのは当然だ。元首相の銃撃は社会にも大きな影響を与えた▼だが、一般人と総理経験者では命の価値が違うと日本の司法は判断した―そう見られても仕方ないほど、偏った判決だ▼カルト宗教2世としての壮絶な生活、窮状が彼を凶行に駆り立てたのは公判でも明らかで、弁護人は情状酌量を求めた。だがその主張も「不遇な生い立ちが意思決定に影響したとはいえない・くむべき事情はない」とし、完全に退けられた▼母親の狂信による人生の崩壊が、犯行の理由にもくむべき事情にもならないというのは無理がある。それでは動機の説明がつかない▼特定宗教と政治が癒着し、カルト被害が長年放置されていたこと、救済を怠った行政・司法の責任にそうまでして触れたくないのか▼被告が書き残した「巨悪あり。法これを裁けず」という言葉が重い。公益を追求するはずの司法が社会のゆがみを可視化も是正もしてくれず、政治は巨悪を保護しさえする―その絶望が彼をあそこまで追い詰めたのではないのか▼立場の弱い個人に罪として全部を背負わせ、臭いものにふたをしたまま終わらせるのか。






