令和7年12月27日付
故・田中角栄元首相は功罪が相半ばする人物で褒められた面だけでないのは知っているが、「国民の生活を良くしてみせる」という気概を持った政治家だったことは間違いなかろう▼外交でも社会保障でも、田中内閣の功績とされることは数多い中、「福祉元年」と呼ばれた昭和48年、高額療養費制度を創設したことは特に画期的だったはずだ▼医療費の自己負担額に上限を設ける同制度のおかげで、安心して治療に専念できるなど、どれほど多くの国民が救われたか▼けれどこの限度額を次年度、最大で約4割引き上げる政府案が決定された。それも、財務相と厚労相の折衝のみで▼患者の自己負担が激増すれば、手術しない(できない)・治療が続けられないという患者も確実に増えるだろう▼財源を理由に医療の安心は削られるばかりだが、会計監査院は「国の基金」が20兆円超も使われずブラックボックス化していると指摘。〝ない袖はふれない〟というわけでは決してないはずだ▼誰もが医療にかかれる―そんな誇るべき日本の宝が国民皆保険制度。中でも高額療養費制度は重要なセーフティーネットだった▼自民がつくり、国民から支持されてきた仕組みを自民自身が壊そうというのか▼まるで、〝どこまでなら暮らしの安心を破壊して大丈夫か、どこまでなら国民はついてくるか〟と試されている気分だ。






