令和8年08月05日付
「もうお帰りですか」▼体育館を出ようとする首相を避難者が呼び止める。「総理が来るっていうから待ってたのに、無視されるのがどんな気持ちか分かりますか」▼抑えた怒り。静かだが強い口調。「すみません、話を聞かせてください」と首相はきびすを返し、被災者と向き合う。「もう限界」「内閣の人たちみんな連れてきて、ここで生活してみて」▼―東日本大震災発生後、当時の首相・菅直人氏と福島の避難者とのやりとりだ。1時間の視察予定は、菅氏が「全員の声を聞かねば」と言って約5時間に延長された▼発災時、自民の政調会長だった石破茂氏は宮城の被災地を訪れた際、被災者と夜中まで語り合い、避難所の硬い長いすに横たわって朝を迎えた▼仮にパフォーマンスだとしても、有権者の厳しい声を受け止める姿勢を示せるかどうかが政治家の資質を物語る▼高市首相も先日、熊本を訪れた。視察直前にクーラーと段ボールベッドが設置された避難所では選ばれた被災者が別室へ呼ばれ、「至れり尽くせりで不満はない」と語る様子のみ伝えられた▼毎食パン1個と水だけ・プライバシーなしの雑魚寝・断水でトイレが使えず・気温40度超で寝られない・車中泊の女性が熱中症で死亡―地元紙が伝える現況とはだいぶ違うようだが、そういう厳しい意見を聞かされる現場は訪れなくていいのだろうか。





