令和8年07月11日付
『ざわざわ森のがんこちゃん』という、Eテレで30年続く人形劇がある。恐竜の子・がんこちゃんと周辺で起こる騒動を通し、道徳を伝える番組だ▼先日、「失われたふるさと」という副題で特別編が再放送されたのを偶然視聴した▼災害で故郷を失ったトゲトゲ鳥の「ソラ」たちがざわざわ森へ避難してくる。だがそのために子どもらの楽しみにしていた祭りが中止となり…というあらすじだった▼家を失い心を閉ざすソラや、トラウマを抱える妹。「あいつらのせいでお祭りがなくなった」とトゲトゲ鳥に反感を持つ森の子たち―▼しかし最後には、故郷をなくす体験をした相手の立場に立ってそのつらさを想像し、自分の無知を反省する。羽も表情もすすけてボロボロだったソラたちが森の住民と理解し合い、本来の美しい姿を取り戻す場面は、涙なしで見られなかった▼あとから、このエピソードが東日本大震災10年の特集として制作されたと知った。原発事故を受けた福島や、津波後にやむをえず県外へ避難した人たちの心情を重ねるとともに、これは戦火で祖国を追われた難民にも通じる話だと気づいた▼さまざまな事情で「失われたふるさと」をあとにした人々がいる。今や多くの学校にいろんなルーツを持つ子どもが在籍する。がんこちゃんたちに負けないよう、その立場を想像できる大人でありたい。






