令和8年09月27日付
21日は「賢治忌」―37歳の若さで逝った宮沢賢治の忌日だった▼生前は無名に近く、草野心平らの尽力がなければその作品群が世に知られることはなかったのではないか──そう思っていた。賢治の葬儀で、3人の友人が読んだという弔辞の内容を知るまでは▼〈あなたは梨の花の匂ひがするやはらかい雲の上で、今頃何を思つて居られるでせうか〉から始まる実に詩的な美文だ▼ここには〈あなたは何故あなたの人間力を芸術をもつと正当な自信と誇を以て世に主張されなかったのでせうか、私どもはあなたをあなたの芸術を世界第一流のものとして、大きいほこりを持つのに御本人のあなたは、この世のものでないやうな謙譲でひたすらかくして居られました〉というくだりがある▼さらに〈この町の人々は、この国の人々は、そして日本の人々は五十年或は百年の後に、あなたがどのやうに偉かつたかといふことがわかるでせう〉〈あなたの輝しい沢山の遺稿を目のあたりに見て私どもは芸術の不滅であることを確信します〉と続く▼彼の友人たちは謙虚すぎる賢治に焦れながらも、いつか必ず、世界の側が彼を認めざるをえない日が来ると予言していたのだ▼この弔辞は全文にわたり美しいのだが、そのような言葉を朋輩に贈られる賢治の才は、世に出るべくしておのずと放たれたものだったのだと改めて知る。






