令和7年11月28日付

 政府関係者も陰で胸をなで下ろし、内心感謝しているのではないか。台湾有事発言に平和的な落としどころをつけるため、公明党と立憲民主党がアシストしたことに▼公明・斉藤代表は、存立危機事態に関する質問主意書を用い、首相から「従来の政府見解を完全に維持。見直しや再検討が必要とは考えていない」とする答弁を引き出して、これを閣議決定した▼また立憲・野田代表は先の党首討論で首相に発言の真意を質した際、具体例が出なかったことを受け「事実上の撤回と受け止めた」と述べた▼「なぜ閣議決定する必要があるのか・なぜ野党が勝手に撤回を決めるのか」と、〝余計なお世話〟のように見る向きもあろうが、小欄はこれぞ政治的技巧なのだなあと舌を巻いた▼発言の撤回はもはや厳しい段階にあった。中国側から要求されてしまったあとで撤回すれば〝相手に屈した〟とみなされ、支持率は下落、中国に大きな貸しをつくることにもなる▼野党は「国益を損なうぐらいなら」と、発言は撤回させず〝これまでの解釈からは変わっていませんよ〟と公的に表明できるようサポートしたわけだ▼ただ、これで相手に矛を収めさせられようというのはこちら側の希望的観測に過ぎない。すぐ事態の収束につながるかはまだ不透明で、一度崩れたものはまた、一つずつ地道に積み上げていく必要がある。