令和8年05月29日付

 先日、「情報や知識は身を守るための盾」という話を書いた。今回は、その「知識」が周囲の人たちの命まで守ったエピソードを紹介したい▼22年前、スマトラ沖地震による津波がタイにも押し寄せた。この津波襲来前、プーケット島のマイカオビーチにいた約100人を避難させたのは、当時10歳の英国人少女・ティリーさんだった▼彼女は両親と休暇を過ごすためタイを訪れていたが、その2週間前に地理の授業で津波について学んだばかりだったという▼地震もないのにビーチの波が引き、海がビールのように泡立つのを見た彼女は「津波の前兆だ」と訴えるも、両親は最初取り合わなかった▼だが近くにいた日本人がティリーさんの発した「TSUNAMI」という言葉を聞き、「娘さんの言っていることは本当だと思う。スマトラで地震があったようだ」と助け船を出した。そこで父親が警備員に説明。ビーチにいた客は約9㍍の津波が襲い来る前に全員、間一髪で難を逃れた▼地元では当時、津波についてよく知られておらず、死者・行方不明者は約9000人に上った。マイカオで死者0の奇跡を生んだのは、1人の少女の「知識」だったのだ▼同じように、揺れがないのに津波が来て、大船渡だけで53人の命が失われたチリ地震津波から24日で66年となった▼時を経ても伝え続けたい知識がある。