令和8年08月30日付

 先週、決勝戦が行われた甲子園。優勝した智辯和歌山の姿に、強い既視感を覚えた▼マウンドに踊る紅白のユニホーム。29年前、そっくりの光景を見ていた。同校が平安との決勝を制し、夏初Vを決めた時だ▼違うのは、主将で捕手だった青年が監督になったこと。その名は中谷仁。画面越しにも伝わるキャプテンシー…温厚な人柄、周囲からの信頼の厚さは47歳の今も健在と分かり、懐かしさがこみ上げた▼私も当時、同じ高3。甲子園を1回戦からほぼずっとTVで見ていた。志望校も決まらず、受験勉強に身が入らなかったのだ▼智辯は強かったが、スター選手がいたというより継投で勝ち上がったチームだった。エースがケガでほとんど登板できない中、「あいつをもう一度マウンドに立たせたい」という全員の思いを、中谷主将が一つにまとめ上げていた▼そんな姿に感化されて10月、甲子園を特集した野球雑誌を1冊買った。それが私の進路を決定づけようとは▼こんなふうに、頑張る人たちを取材できる人になりたい─。出版社に入ると目標を定めて東京進学を決意し、秋からはわき目もふらずに勉強した▼優勝インタビューに答える中谷監督を見て、18歳の熱い記憶がよみがえった。仁という名の通り仲間を思いやる心を持った人は、生徒を温かく見守る名監督になっていた。うれしい〝再会〟だった。