令和8年07月23日付

 子どもの旅行や〇〇体験といった機会が、親の経済力で左右される―いわゆる「体験格差」という言葉を近年やたら聞くようになった▼SNS普及の弊害だろう。よその家庭が海外で夏休みを過ごす投稿などがことさら目につき、〝同じようにできないわが家は格下に見られるのでは・子の可能性を奪うのでは〟と、不毛なコンプレックスや罪悪感を持つ親が増えたというのは▼友達の家をうらやましがった時、昔なら「よそはよそ、うちはうち」とたしなめられたものだが、今は親のほうが「よそはよそ」と思えなくなってしまったらしい▼子の興味を広げてやりたいという思いは尊いが、その子のアンテナがどの方向に向いているか見極めず、〝他者に誇れる理想の体験〟を押し付けるばかりでは親の見栄の域を出ない▼また、営利企業にとっては「お子さまを不利にしないために体験させましょう」というのが、利益を生む〝脅し文句〟である点にも注意を向けたい▼自分たちの子ども時代を振り返ってみてほしい。体験がどうのと声高に言われたり関心を持っていたろうか▼夏休みというだけで特別だったはずだ。一日中友達と遊び、いとこたちに会い、図書室の開放日に静まり返った校舎を探検し、夏祭りの日だけは夜も外出させてもらえて―それで十分「子どもの時にしかできない体験」だったと思うが…。