令和7年06月27日付
23日の「慰霊の日」、石破首相が「ひめゆり平和祈念資料館」を訪問し、ひめゆりの塔に献花した▼現職総理が同館を訪れるのは実に30年ぶりという。首相は沖縄戦で動員された学徒らの無念さに思いをはせるコメントを残した▼首相になってからの彼に対し「長年冷や飯を食わされながら持論を曲げずにきた男も、みこしに乗せられれば数と党の論理にのまれてしまうのか」と残念に思うばかりだったが、それでも時々こうして、彼は彼なりに筋を通そうとする時があるのだと分かる場面も見る▼今回の訪問は「ひめゆりの塔は歴史の書き換え」と発言した自民参院議員の西田昌司氏ら、党内の不心得者に対する痛烈な牽制となったろう▼沖縄を捨て石にし、県民に犠牲を強いたのが旧日本軍である。それは〝日本人の誇り〟とは真逆をいく、日本人が直視したがらない残酷な歴史の一つだ▼参政党などは、沖縄戦の実相をわが国をおとしめるためのプロパガンダかのようにいう。事実をねじ曲げる極右政治家らが増えたのは、そのほうが本土ではウケるからだ▼戦争の実体験と記憶を持つ人々が減ってきたのを好機とみて、その証言を漂白しようとする者がのさばり始めた中、石破氏は今回、最低限の矜持だけは示したと思う▼無論、そのうえでなぜ参院選で西田氏の公認を許すのかと失望を覚えざるをえないわけだが…。