令和8年04月29日付

 俳人・中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」が詠まれたのは、明治時代が終わって20年以上がたつ、昭和6年のことだったという▼これをもじって、平成の中盤以降は「昭和は遠くなりにけり」という言葉がよく使われた▼バブル崩壊で長期停滞したとはいえ、GDPは世界2位、1人当たりGDPも米国を上回る水準だったことがあるわが国は、〝世界からの羨望と信頼〟を集められる国であり続けた▼帝国主義の亡霊も、敗戦国の面影も…昭和という時代の「暗黒」をはるか後方へと追いやって、日本は国際社会での立ち位置を不動のものにしてきた─はずだった▼ところが平成も終わって8年になる近ごろはどうも、昭和を…それも戦前の昭和を血眼でたぐり寄せ、再現しているように思えてならない▼最近、特に戦前~戦後を舞台にした小説や作品を見返していると、かつては心にとまらなかった部分に怖いほどのリアリティーを覚える▼政治と軍が癒着し、財閥などの〝特権階級〟だけが肥えている。国民が苦しいのは外敵がいるせいだとして不満を外へそらし、軍に不平を言う者は愛国心に欠けると非難する。燃料危機が訪れる…▼きょうは『昭和の日』。私が懐かしむ昭和は、製造業で覇権を握り、平和主義を貫き、世界から認められていった時代のことであって、昭和20年以前ではない。