令和7年12月10日付
本当に最悪の場合は、「3・11のような地震が起きると想定することになる」▼9日午前2時から行われた気象庁の会見を見ていて、一番ずしんときたのはその言葉だった▼あの規模の災害などあと数十年は起きまい―心のどこかでそう思っていたと気づかされた▼今般、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が初めて発表された。北海道~東北太平洋沖の日本海溝と千島海溝沿いにおける巨大地震発生の可能性が「普段よりも高まった」とし、警戒を呼びかけるものだ▼両海溝沿いでマグニチュード(M)9クラスの大地震が発生した際の想定は、本紙でも何度か伝えてきた。「場所によっては東日本大震災より高い津波が来るおそれがある」と▼4年前に政府が公表した「最悪のケース」は「冬の深夜に発生し、早期避難者が少ない」場合で、なんと7道県で約20万人が犠牲になると試算された▼冬の深夜―8日の津波警報発表はまさしく身につまされた▼今後1週間程度のうちに後発の巨大地震が起きる確率は決して高くない。気を張るばかりでは疲弊してしまう。備えを見直し、緩んでいた気持ちを引き締め直す機会になったと前向きに捉えたい▼何より、それほど最悪の想定でも「避難率が高まるなどすれば人的被害は8割減らせる」と分かっている。命を守る行動を取ることで、後悔は確実になくせるのだ。






