令和7年11月26日付

 関東に住む知人が〝ナチュラル排外主義〟に染まりつつある▼あからさまな差別行動を取るわけではない。ただ会話の中に「このままだと中国人に乗っ取られる」「埼玉はクルド人で大変らしいよ」「アフリカからの移民なんて増やすわけにいかない」といった発言が自然に出てくるのだ▼なぜそう思うようになったのか、実際に何か被害を受けたのかと尋ねると「そういう動画がたくさんあるし、みんな言ってる」と答えるだけで、外国人と接したり直接困らされた経験は自身にも周囲にもないという▼知人の話す内容には閲覧数稼ぎを目的としたデマも含まれていたのでそう伝えると、「でも外国人が増えたのは事実だし怖い」と必死に言いつのる▼外国人や異文化への嫌悪や恐怖(ゼノフォビア)は誰もが持ちうる普通の感情だ▼だからこそ日本人も海外…特に欧州へ行けば「アジア人」としてゼノフォビアの洗礼に遭う。突然罵倒されたり、中指を立てられた経験が私にもある▼だがそうした偏見は「対象を知らない」ために生まれるもので、本当に排すべきは個々の無知や無理解なのである▼その点、気仙では排外主義なんてはやらないと信じられる▼技能実習生ら、海外から来た人たちと日常的に関わる機会が多く、高校生が率先して共生のために取り組むような地域なのだ。差別などどうして起きようか。