令和8年09月08日付

 「天才なる者がいるとすれば、間違いなくあいつはその一人だよ」。父が生前、自身の同級生を指してはそんなふうに言っていた▼その同級生こそ、佐藤勝哉さん。大船渡市大船渡町にあった山小屋・寿限無亭の名物管理人であり、建造の立役者だった方だ▼あだ名は「棟梁」。昭和17年度生まれの旧大船渡中第11回生が、湾を一望する山中に自分たちだけでログハウスを造れたのも、棟梁の知識と技能があればこそだったと聞く▼仲間内で「こういうの造れるか?」と聞かれた棟梁が、簡単な図をササッと書いただけですぐ作業に取り掛かった時には驚いた。一度目にしたもの、あるいは完成が予想できるものなら、寸法や手順はほぼ見通せてしまうようなのだ▼棟梁には物を買って済ませるという選択肢がなく、何か見るとまず「どうつくるか」考える回路が動き始めるらしかった▼木で造作する、石を積むどころか、鉄製の部品が必要とあらば鍛冶だってこなしてしまう。廃品さえ、その手にかかれば有用な道具になった▼技術力はもちろん、人を楽しませたいという性格が生む発想力に、天賦の才が輝いていた。すべてが〝ただ息を吸うだけ〟みたいに、あっけらかんとしていて軽やかだった▼先日、その訃報を知った。今頃、父や母を含め先に逝った同級生らに迎えられ、早速何かを造り始めている気がする。