令和8年08月28日付
富士フイルムの「写ルンです」が発売40周年を迎えた▼携帯電話さえなかった時代、皆が旅先などで持ち歩いたのがこの「レンズ付きフィルム」だった▼カメラの扱い方が分からずとも使えて、軽量。光量の少ないところで撮ると被写体が真っ暗になってしまうが、〝シャッターを切る〟以外の技術が加わらないことで、かえって撮影者の興味や個性が直に投影された写真になるのが魅力だ▼デジタル化により市場は下火となったが、10年ほど前から需要が下げ止まり、ここ5年は拡大傾向が続くという。昨年度の販売実績は前年度比約1・5倍と、明らかに〝ブーム〟のきざしがある▼同社は「フィルムを巻き、ファインダーをのぞいて1枚1枚大切に撮影するという手触り感、現像を待つ時間、フィルム特有の画質、写真を見返し共有する体験が新鮮に受け止められている」と分析する▼気仙両市では震災から2年後、名古屋の女性が「何気ない毎日の喜びや、被災地の今を切り取って」と市民らに写ルンですを配り、1カ月を記録してもらう企画をしたことがあった。のちに開かれた展覧会では、まさに「1枚1枚大切に撮影」されたと分かる写真が並び、胸を打たれた▼撮り直しがきかないからこそ目の前の事象と真剣に向き合う―コスパ、タイパと言われる時代だが、そんな時間の使い方も見直されたらいい。






