令和7年11月09日付

 子ども時代(つまり少なく見積もって30年以上前)と比べ、減ったと感じるものが複数ある▼まずトンボ。幼い時は無数のトンボが飛び交う風景で秋を感じられたが、最近は水田の周辺にさえあまりいない▼次にスズメ。昔はあのチュンチュンという大合唱が目覚まし時計代わりだったのに、今はその声が聞こえない。電線に並んで止まっている姿もとんと見なくなった▼この実感はデータにも如実に表れている。昭和50年代…まさに私が乳幼児のころ…から令和までに、日本のスズメの個体数は3分の1~半数程度まで減少したとの調査結果があるのだ▼環境省・生物多様性センターなどが平成17年から15年間、全国約1000カ所で行った調査によると、スズメの1年当たりの減少率は、レッドリストでも「絶滅の危険が増大している種」に匹敵する値を示したという▼世界的に見れば、送粉によって果実・果菜の生産に寄与するハナバチも著しく減少しており、農業に悪影響が出ていると聞く▼水田等の減少や、護岸整備の影響、殺虫剤・除草剤の使用増、そして人が気密性の高い住宅に住むようになり、小鳥が巣を作れなくなったこと…生物減少の遠因には人間の都合がある▼暮らしを便利に、快適にすればするほど、他の生き物どころか、やがては人も生きづらくなる世界にしてしまっているのかもしれない。