令和8年01月14日付

 報道番組に革命を起こしたともいわれる希代の名司会者、久米宏さんが亡くなった▼昭和末期のエンタメがまだ記憶にある世代としては、やはり『ザ・ベストテン』で黒柳徹子さんと見せた丁々発止のやりとりが印象深い▼その軽妙でコミカルなイメージに加え、『ニュースステーション』では、笑顔の下に鋭さをひらめかせた。予定調和に進行し無難にまとめるのではなく、正義感と信念に裏打ちされた自分の言葉でニュースを伝えていた▼本人は「自分をジャーナリストだと思ったことはない。ただのニュース司会者だ」と語っていたが、芯には揺るぎなき〝報道哲学〟をかいま見せた。民放、そしてNHKのあり方も強く指摘していた▼ニュースステーションの最終回では「戦後に生まれた日本の民放は、戦争を知らない。国民を戦争に向かってミスリードした過去がない。これからもそうならないよう祈る」と、NHKでは「政治を伝える放送局が、人事と予算で国家に首根っこをつかまれる状況は間違っている。先進国にあってはならないことだ」と発言している▼まるで何かを予言するような言葉ではないか。終戦の前年に生まれた久米氏なりの〝辞世の句〟だったと思えてならない▼司会に復帰し、今の日本についてどう語るのか、ぜひ聞いてみたかった。どんな言いにくいことを言ってくれただろうと。