令和7年11月27日付

 どこから話を始めたらいいか、どの角度から語るべきか皆目見当もつかないと悩み、この10日余り1行も書けずにいた。高市首相のいわゆる「台湾有事」発言がその後、国内外にどのような影響を及ぼしているかについてだ▼同発言にまつわる問題はそれほど複雑で、多岐にわたり、この件で浮き彫りにされた日本の現状と課題もまた深刻である。小欄が1週間連続で書き続けても説明しきれないぐらいに▼おそらく国民の大半は、大変なことになったとは感じていまい。〝よく分からないけれど高市さんが何やらキッパリ言い切り、中国にこびない態度を示してくれてスッキリした〟という感じではなかろうか。内閣支持率は高いまま堅調で、〝強い日本〟が戻ってきたと、むしろ熱狂的に歓迎されている様子である▼しかしそもそも存立危機事態とは?何が中国を激高させたのか?そして何より台湾と周辺諸国、欧米は日本を支持しているのか?という肝心の問題は置き去りだ▼前の石破政権でやっと水産物の輸出再開へこぎつけたところを、また白紙に戻された。原発処理水を理由に禁輸した時は、科学的根拠もなく、世界から笑いものにされたのは中国の側だった。相手の態度こそ愚かしいと批判できた▼ただし今回は違う。正当性がないのは日本のほうなのである。まずはそこを起点に話を始めねばならない。