令和7年11月20日付

 悪夢の続きを見るような思いがした。大分県大分市佐賀関で発生した大規模火災である▼住宅など170棟以上が燃え、焼け跡からは1人の遺体が見つかった▼県は災害救助法の適用を決め、自衛隊に災害派遣を要請した。ニュース映像を見る限り、火勢こそ一時よりは収まってきたようではあるが、19日午後4時時点では鎮火にいたっておらず、山林にも延焼している▼出火原因はまだ知りようもないが、大事なのは「たとえわずかな火であっても乾燥状態や風の強さによっては瞬く間に燃え広がり、災害規模の火事に発展する」という事実だ▼しかしあれほど世間を騒がせた山林火災を経てなお、いまだ「野焼き」を目にすることがあり、がっくりくる。さすがにこの気仙地方の話ではないが、やがてはまた当地でも住民の警戒が薄れていってしまう可能性は否めない▼最近、登山愛好者や釣り人らの間では、山で蚊取り線香をたくことがクマ対策として流布しているとか。煙と香りをクマが嫌うからといって▼だが線香の小さな火が大火災につながることも少なくない。旧田中角栄邸の全焼も、線香が原因とみられている。その扱いには慎重さが必要だ▼これからまた乾燥する季節になる。春先に味わったあの苦い経験を教訓としていつまでも胸に刻み伝え続けることが、大船渡に生きる者の責務の一つであろう。