令和8年05月03日付

 サウジ産原油を積んだ出光興産の出光丸が、日本船籍として初めてホルムズ海峡を通過した▼イラン側は、同社所有の日章丸が1953年、英資本に石油利権を独占されていたイランから日本へ石油を運んだ、いわゆる「日章丸事件」に触れ、出光丸への対応は同社への友情のあかしである点を強調した▼これにより複数の事実が浮かび上がる▼今までに海峡を通過した日本関係船には商船三井系の3隻があるが、いずれも外国船籍で関連会社との共同保有であり、行き先も日本ではなかった▼しかし出光丸の通過によって再び、イラン側には日本船籍タンカーを通す用意があると示されたわけだ▼出光丸が通過した途端、日本政府は「政府間の協議のおかげ」と言い出したが、「日本だけ交渉して通過するわけにはいかない」という外相の発言と矛盾する。第一、電話会談で一方的に要求を突きつけることを交渉と呼べるのか▼本当に協議が功を奏したのなら、日本の船が41隻もペルシャ湾に残されたままであることの説明もつかない▼イラン政府から本邦政府へのメッセージは2カ月前から暗に提示され続けている。〝米国に加担せず、戦争終結の仲介を〟―▼大型連休中の外遊、イランをはじめ中東に出向く閣僚は1人もいない。米国の機嫌を損ねない代替先を探す努力は結構だが、それだけではとても補いきれない。