令和8年10月18日付

 海外のミステリを読んでいる時、殺人事件の捜査で登場人物のアリバイを確認する際、「それは何時ごろのことでしたか?」「ええと、確か夜の9時15分前でした」といったような表現が頻出する▼こういう「〇時〇分前」という時刻表現を、私は昔、正確に理解できていなかった。「9時15分前」というのは9時13分や14分ごろ、「10時10分前」とは、10時8~9分あたりだと思っていたのだ▼正しくは、前者が8時45分、後者は9時50分あたりを指すのである▼何かのきっかけでそれを理解した時、「欧米人はなぜ『8時45分前後』とか『9時50分ごろに』と言わず、『〇分前』なんて回りくどい言い方をするのか」と不思議に思ったものだ▼ところがこれは明治以降の日本も同じであり、自分が不勉強なだけだと知った▼ただしどの国も9時30分のことは「10時30分前」とは言わない。あくまでも長針が時計の左側…8や9の位置を指した時…そう〝20分前〟ぐらいまでに限り、この表現を使うようだ▼一方、現代日本では私と同じく、「10時20分前」と聞くと9時40分とは考えず、10時18分ごろをイメージする人も多いようである▼アナログの時計が主流だった時代は、針を見るから「〇分前」のほうが直感的に分かりやすく、デジタルが増えた今は、見たままの時刻を言うようになった―ということだろうか。