令和8年06月17日付
『声に出して読みたい日本語』という本がベストセラーになったのは、20年以上前のことだ▼平家物語からガマの油売りの口上まで、覚えて声に出すと心地よい日本語の名文・名句を集めた同書の人気により、当時はちょっとした暗誦ブームが起きた▼声に出して読む―つまり音読が、少なくとも暗記に有効であることは事実だったようだ。兵庫医大などの研究チームが先ごろ、これを裏付ける研究結果を発表した▼論文を大まかにまとめると、呼吸…特に息を吐く動作が神経細胞に何らかの作用を持つそうだ。息を吐いている時は脳内に伝わる信号が静かになるため、記憶が定着しやすくなる―と考えられるとか▼そういえば、「春はあけぼの」だの「その昔、竹取の翁というものありけり」だの、今でもそらんじられる古典は繰り返し音読したものばかりだ。掛け算だって声に出すことで暗記した▼東日本大震災後、陸前高田市でボランティアの英語音読会を開催していた外資系コンサルティング企業社長の古森剛さんも、『英語は音読だけでいい』という著書を持つ▼音読会に参加していた気仙の住民には、高校生ら若い世代はもちろん、年配者の中にも臆せず英語を話せるようになった人がたくさんいた▼声を発することは脳を刺激し記憶を豊かにするばかりか、人生をも豊かにしてくれるものであるらしい。






