令和7年03月29日付
〝ものを考えない国民〟が増えるのは、為政者にとって大変な好都合だろう▼国民が知恵をつければ何かと口出しされたりアラも見つけられやすくなるから、手前勝手に振る舞いたい子どもじみた権力者ほど、国民には自分よりバカでいてほしいと願うものだ▼そして米国大統領はそんな願望を隠そうともしない。ついに教育省―日本でいう文科省の廃止に乗り出した▼米は州が一国並みの裁量を持ち、公立校の運営方針も個別に決めている。ただ、それでは州によって教育格差が生まれやすいから、連邦政府が資金面でもサポートする▼バイデン政権下だった近年の教育省は、人種的・性的マイノリティーの子どもたちが差別を受けないようにしたり、教育現場で多様性が尊重されるような取り組みを行ってきた。トランプ氏はこれがいたく気に入らない▼もともと白人男性至上主義、差別主義的な人物だ。そこへきて米国経済は衰退中ときている。移民や外国人、少数者らが〝優遇される〟せいで、本来自分たちが受けるべき恩恵が削られている―国民にそう思わせておくのが、彼にとっては理想の状況である▼教育省がなくなると、貧しい州と豊かな州の教育格差が広がる。富める者はますます富み、貧しい者は底辺部から抜け出せないという連鎖が続くだけだが、そこまで考える力をまずは弱らせたいのだろう。