令和8年06月20日付

 オランダ国王夫妻主催の晩餐会に出席した天皇皇后両陛下のお姿に、これぞ外交、これぞ平和国家の象徴と、深い感銘を受けた▼天皇陛下はスピーチで、国王家とともにW杯を観戦したことや愛子さまについてユーモアを交えて話され出席者を和ませただけでなく、「過去に苦難の時期があったことも忘れてはならない。先の大戦で多くの尊い命が失われ、多くの人が傷ついた。私たちは絶えず謙虚に過去の歴史から学び、平和への努力を続けていかねば」と、蘭国民に向き合う真摯な意思を表明された▼第2次世界大戦は両国の関係を冷やした。日本軍占領下では抑留や強制労働によって多くの蘭国民が犠牲となり、戦後の補償問題も長引いた▼昭和天皇が訪蘭した際は〝帰れ〟とプラカードを掲げられ、車にビンを投げつけられるなど、同国内には20世紀末まで根深い反日感情が残ったのだ▼だが上皇さまをはじめ、皇室は蘭王室との交流を通じて信頼回復に努めてこられた。戦没者慰霊碑に花を手向け、遺族らと対話した両陛下もその思いを継がれている。遺族団体も「両陛下の誠実な言葉と姿勢がありがたかった」と硬かった態度をほどいた▼誠実、謙虚をもって反発する相手にも尊敬の念を抱かせ、前向きな関係を構築しようという気持ちにさせる―外交のあるべき姿を、両陛下は誰よりも体現されている。