令和7年12月24日付

 クリスマスケーキの価格が過去最高を更新した▼原因は上がり続ける材料費だ。たった1年前と比較しても、薄力粉や生クリーム、装飾品は約1割、果物は2割、チョコ類は3割も高くなった。5年前と比べたら卵など倍だ▼今年はクリームを塗っただけのコンビニケーキが人気という。定番のイチゴ等、飾りがないぶん安価だと▼TVではこれを〝わぁ斬新!皆でデコれてすてきだね〟という取り上げ方をしていたが、既成のスポンジやトッピングを使ってケーキを仕上げる楽しみ方は昔からあり、目新しい提案ではない▼むしろ「普通のケーキが買えないほど人々の生活は苦しくなっている」ことの証左なのに、誰もそうは言わない▼「円安に終わりは見えず、来年はもっと苦しくなっているかもしれない」なんて厳しい現実は直視させず、「物が買えずとも工夫が大事」と楽観でごまかすばかりでいいのか▼「皆が我慢しているのに、すぐ批判するのはみっともない。何でも楽しんだ者勝ちだよ」と言うのは、いかにも前向きだ▼だがそれは〝足らぬ足らぬは工夫が足らぬ〟という抑圧と紙一重である。悲観と批判は悪で、我慢できぬ者は〝非国民〟という、戦時下の圧そのものだ▼現状に不満と疑問を持つことも、悲観と批判の精神も捨てない。楽観はともかく、無批判が国民生活を良くした例しはないのだ。