令和8年05月10日付
「母の日」にちなみ、久々に実家の片付け話をする。押し入れに長らくしまわれていた、ひな人形のことだ▼どうしても女児がほしかった母は、私が生まれる2年前にはすでに7段飾りを購入していたらしい。願掛けのつもりだったのだろう▼ところが不思議なことに、私は「桃の節句」にそれらを飾ってもらったことがないのだ▼赤子の私がひな壇の前にいる写真は見たことがある。だから生まれてから1回ぐらいは出したのだと思う▼けれど物心ついて以降は、何度母に頼んでも「飾るのもしまうのも大変なのよ…」と断られ続けた▼母も祖母も働いていて家にいなかったし、よしんば休日に飾るにしても、父や祖父がそれを手伝うような人でないことも想像できた。物わかりの良い幼児だった私は「お母さんが大変なら仕方ない」と早々にあきらめたのだった▼だから実物を見たのは今回の片付けがほぼ初。そして母が渋ったわけにうなずけた▼人形もそれなりだが、道具類がいちいち大きいのだ。ぼんぼりなんて普通の照明器具ぐらいある。当然、ひな壇も大きくて重い▼女の子がほしいという願いが高じすぎ、でかくて分不相応な品を買ってしまった若き日の母の「失敗したなァ」という顔が浮かんで、ふふふ…と笑みがこぼれた。人形こそ飾ってもらえなかったが、注いでくれた愛情は今もこの胸にある。






