令和7年12月05日付
わが国では売買春の買う側に罰則がない▼70年前、法律の成立前には買う側の罰則規定が盛り込まれていたのに、「男性には、はけ口が必要」との参考人意見があったからだという▼買うのだって〝やむにやまれず〟なのだから罰しては気の毒、と配慮されてきたわけだ▼一方で女性は性行為が必要で売るのではない。〝売らざるをえない〟…貧困や障害など、福祉につなげるべき事情を抱えた人が多い点は考慮されてこなかった。真に必要なのは罰よりも保護なのに▼高市首相が今般、男性側の罰則も検討するとしたことで、ようやくこのゆがみも是正されるのかと期待した。だが衆院法務委での平口法務相の答弁には、がく然とした▼「人としての尊厳を害す」とする現行法に係り、「買われる女性の尊厳が害されるという理解でいいか」と問われた大臣は、「男性側の尊厳も害されている」と述べたのだ▼理解に苦しむ。自ら求めて買った側がどう尊厳を損なうというのだ。「カネを払わねばならないのが情けない」と落ち込むとかか▼女性たちはよく見せしめに摘発されTVなどに顔をさらされているが、まさか罰則がついて同じようにされたら、男性の場合は立場がないでしょ?ということか。同情の余地もない▼〝男だってつらいんだ〟は聞き届けられ、女の困難は無視される―半世紀以上も進歩していない。





