令和8年10月15日付

 この仕事をしていなかったら、古里の歴史や風習について知らないことだらけだったなと思う。「嫁御行列(道中)」もその一つだ▼妻が実家から嫁ぎ先まで徒歩で向かう際、親族らが行列をなして長持ち唄を歌い、近隣に「迎え酒」をふるまい、奇抜な衣装を着けた「迎い道化」らがにぎやかす―といった婚礼行事である▼昔は大部分が村内婚であったからこそ、婚家へ歩いて向かう慣習も生まれたわけだ▼同時に、当時の婚姻とは個人や家同士のものという以上に、当事者が所属する「社会」のものであり、地域をあげてこれを承認する色合いが強かったのだろう▼一組の婚姻はすなわち、一村全体に関わる重大事だったはずだ。昔はその仕切りを「若衆組」など村の青年らが担っていたため、道化のようなおどけた余興も始まったと聞く(昔も今も、祭りや祝い事など、羽目を外して騒げる好機を若者は絶対逃がさないものなのだなあとおかしい)▼地域の協力を得て迎え酒や道化を取り入れた婚礼は、今でも時折見ることがある。先日、おおふなと夢商店街で行われた花嫁道中では、新郎が「道化は花嫁側の緊張もほぐれる風習だと思う」と話していたことが心に残った▼従来の意味は薄れたが、新郎新婦の門出を祝い、地域が2人を温かく迎え入れる意思を示すことができるという点では残ってほしい伝統だ。