令和8年02月21日付

 『サウンド・オブ・ミュージック』は、1930年代のオーストリアを舞台とした、実話に基づくミュージカル映画だ▼トラップ大佐と7人の子ども、家庭教師のマリアが『ドレミの歌』『もうすぐ17歳』『私のお気に入り』など、誰もが聞いたことのあるナンバーを歌い上げる▼昔は単純にファミリー向けの娯楽映画としか思わなかった。ナチス・ドイツの強行による併合、独裁といった時代背景を理解していなかったからだ▼前半はマリアと子どもたち、大佐が心を通わせる様子が快活かつロマンチックに描かれる▼しかし久々に再見したところ、長女の恋人や一家の執事、知人がすでにナチの親衛隊、礼賛者となっており、序盤から物語に暗い影を落としていることにようやく気付いた▼真の愛国者ゆえ、同調圧力を受けてもドイツに従わない大佐は白眼視され苦境に追い込まれるが、そんな中で『エーデルワイス』を歌う▼国を象徴する高貴な白い花の描写をもってして祖国への本物の愛を大佐が歌い示すと、居合わせた人々も歌声を合わせ、ナチ党員らを圧倒する▼自由を求める人々の間に、抵抗の心が残っていたことを示す名場面だ▼エーデルワイスの花言葉は「忍耐」と「勇気」。権力者に従わぬ者を「非国民」と扱い冷遇した時代にあって、圧力に堪え忍びつつも勇気を捨てなかった人たちに、思いをはせた。