令和8年06月28日付
今年は中尊寺の堂塔伽藍落慶から900年、また29日は「平泉」の世界遺産登録から15年の節目にあたる▼昨年、国宝「中尊寺経」の一部とみられる経巻が住田で見つかったことは、実はそれまで関心がなかった平泉の浄土思想を知る機会になった▼中尊寺経…紺紙金銀字交書一切経はその名の通り、紺に染めた紙に金泥と銀泥で1行ずつ交互に写経するという、日本唯一かつ世界的にも珍しい装飾的な経巻だ▼美しさもさることながら、それを作らせた奥州藤原氏の途方もない財力と権力にまずは圧倒される▼だが一切経の真価は、落慶にあたって記された「中尊寺建立供養願文」を読んでようやく理解できた気がする▼初代清衡は敵も味方も人も獣も区別なく、戦乱で失われた命を弔うために中尊寺を建立したとし、「このみちのくの地に、誰の命も無駄にされない平和な仏の国を築く」という決意を記す▼そして「この寺の鐘の音があらゆる世界に響きわたり、分け隔てなく苦しみを取り除き、安らぎを与えてくれる」よう願うのだ▼約2万巻、3代にわたる大事業が、鎮護国家への一途な思いを礎になされたこと、すでに900年前、あまねく命が大事なのだと説いた為政者がいたことに胸を打たれた▼世界各地に戦火が広がり、きな臭さがこの国にもおよぶ今、世紀を超えた祈りを改めてかみしめたい。






