令和8年11月08日付
廃線となった旧JR岩泉線を活用したレールバイクが、宮古市和井内という山あいの地区にある▼旧和井内駅~旧中里駅間の鉄路上を2~4人乗り自転車で走るのだが、人々がかつて車窓から見ていたであろう風景を風とともに感じられ、大変に味わい深い▼人の往来が少ない山間部の地域活性化として始められたもので、運営は地区の高齢者が担う。レールバイク自体も素晴らしいが、土日祝日や大型連休、お盆も休むことなく交代で当番についているというお年寄りたちの、心からの親切ともてなしが何よりも印象に残った▼和井内というのは江戸時代中期の禅僧である牧庵鞭牛和尚の生まれ里でもある▼かつてこの地は人馬の行き来が困難な難道しかなく、往来による犠牲者が絶えなかったばかりか、洪水や凶作が起きれば集落は孤立。民は飢えて死んでいったという▼それに胸を痛めた鞭牛は自ら道具を握り、街道の開削工事に着手。73歳で往生するまでの約30年間、村と村とをつなぎ続けた▼宮古街道(現在の国道106号・宮古~盛岡間とほぼ重なる)をはじめ、吉里吉里~山田、腹帯~南川目、宮古~岩泉、橋野~鵜住居など沿岸部も結んだ。その総距離は、なんと400㌔!▼鞭牛の人々に対する献身、利他共栄の精神はきっと今もこの地に息づいているのだ―和井内の住民の姿に、それが見てとれた。





