令和8年03月01日付

 鈴木浩駐英日本大使が英国民から大人気だ▼大使が英国の食や伝統を積極的に楽しむ姿を見て、「彼は地球上のどの大使より最高の存在」「親愛なる日本、彼をずっとここに置いてくれ」といった声が絶えず寄せられている▼果ては「他国から借り受けた国宝」「彼に勲章を」とまで…「この調子だと大英博物館に収蔵されるだろう」というのも、かの国の歴史を思えばさえたブラックジョークだ▼なぜ同大使がこれほど国民の心をつかむのか。それは現在の英国社会の不安定さと無関係ではないようだ▼暮らしが徐々に苦しくなり、伝統文化の急速な衰退も感じている人々が、外部の視点から祖国を再認識し自信を取り戻すきっかけになっているという分析がある▼これは今やどの先進国にも共通の状況だろう。国力という基盤が揺らぐと、その不安を埋めるため「この国は素晴らしい」という言説にすがりたくなる▼同大使が絶賛されるのも言ってしまえば国粋主義の裏返しであるわけだが、一方で彼の人気を媒介とし、日英の両国民もSNS上で互いをたたえ合うという温かな交流が見られる▼自国の文化を尊重してもらえるとうれしいのは万国共通。なら世界中が自国第一主義へと向かう中、あえて他国の美点に目を向け、率直に褒め合うことも立派な外交…と思うのは単純すぎようか?しかしそれが理想だ。