令和8年05月26日付
ポンペイ。西暦79年、ヴェスヴィオ噴火による火砕流で、地中へと消えたイタリアの古代都市である▼生き埋めとなった人々が火山灰にかたどられた状態で見つかったことでも有名だ。遺体こそ消失していたが、逃げまどう市民の最期の瞬間は〝タイムカプセル〟のように保存されていた▼身を寄せ合う夫婦らしき姿や、幼児を守ろうと覆いかぶさった大人の姿、鍵付きの箱を抱えた人の姿など、104人が石こう像として残る▼最近、石こう内の骨のDNA解析といった調査が行われた結果、彼らに関する推測が塗り替えられたという▼鍵付きの箱を抱えた遺体は、人の欲深さの象徴のように語られていたが、箱には財産ではなく医療道具が詰まっていると分かった。この人は医師としての責務をまっとうしようとしたのだろう▼屋内で見つかった成人と子どもは、母子と考えられていた。母が子を守ろうとして死んだと。しかし実際は血縁関係のない成人男性と幼児であることが判明。男性は黒い肌と髪であった可能性が高いという▼収集された遺伝子データから明らかになったポンペイは、移民を含む多様な背景を持つ人々が支え合う国際都市だったことだ▼民族やルーツに関係なく交流し、互いに助け合う風土があったポンペイ。まちが栄え豊かだった背景には、市民の寛容、心の豊かさもあったのではないか。





