令和8年07月22日付
31日劇場公開予定の『開戦前夜』は、昨年NHKで放送された『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』のドラマ部分を映画化した作品だ▼ドラマとドキュメンタリーを組み合わせた構成で、日米開戦前夜に設立された首相直属機関「総力戦研究所」を掘り下げた▼官僚、軍人、民間の生え抜きが集められた同研究所は、日米が戦った際の戦局を「日本の必敗。圧倒的敗北」と予測した▼ドラマでは、所長である陸軍中将がこの結論を覆すよう圧力をかける悪役として描かれた。しかし実際には研究所内の自由な議論を後押ししたとされる▼劇中では別名に置き換えられてはいたが、ドキュメンタリーと併せて放送された以上、視聴者はドラマ部分もその延長線上の史実として捉えるのが普通である。このため所長の遺族が名誉棄損などで制作サイドを訴えた▼誰かを悪役にしないと面白くならないと考えての改変だったろう。だが、誰もが勝機なき戦いと分かっていながら、誰も止められず、日本中が巨大なうねりに巻き込まれていったという事実をそのまま描くほうが、強烈なメッセージとなったはずだ▼その点を除けばドラマの出来が秀逸だったため、劇場版でこの改変が訂正されなかったというのが惜しくてならない。今だからこそ見てほしい作品だけに、遺族への配慮と脚色に依らない誠実さが必要だった。






